昼食後、誘われるかのように少し離れた社に向かった
意外なことに、社の先には海が広がっていた
春のにおいがする海だった
どうして街中に流れる風は冷たいのに
海から届けられる風はこんなにも温かいのだろうか
そこにはなぜか 人がかかわっているように感じた
自然はときに無慈悲だが その恩恵はなにものにも変え難いことがあると感じた
潮風に包まれながら仕事をし、そして束の間の休息を過ごした
そこには楽しさも 疲労も 積もる想いも
寄せては返す波のように行ったり来たりしていた
夜の街を歩くと ひとつの酒場を見つけた
バーではあるが 酒場という名のほうがふさわしいように感じた
3杯のショートカクテルをガソリンのように流し込む
そうでないと 自分の想いを動かすことはできないと感じた
店内を見渡すと 日中に訪れた社のお札が貼られていた
そうか、と内心納得し 感謝の杯を掲げた
どうやらここへは連れてこられてきたようだ
この止まり木で休め
ここで蓄えろ
成功ばかり気にするな
まずはお前が動け
お前が語れ
お前が示せ
お前がその姿を見せろ
お前でいることを忘れるな
それがわかったら この酒を飲め
そしてまた 歩き出せ
そんな荒っぽさを感じていた
とてもいい時間だった
酒場のカウンターは ときに止まり木と呼ばれることがある
休むという感覚ではなかった
その場に立ち止まり 何かを蓄える
それは今後の自身にとって 息することと同じくらい大切なことのように感じた