つたわりとどけ。

日常と非日常のはざまから、伝え、届けたいことを個人で探求し、実践します。

【詩】一瞬にして響く

遠くで

雷鳴が轟いていた

そうだと思っていたはずなのに

その音はすぐに近づいたかと思うと

あっという間に彼方へ消えていった

あちこちにフラッシュを光らせながら

音でも光でも

一瞬にしてこの世界を支配した

 

何かが割れるような轟音は

あらゆるいきものの気を引きつける

闇を一瞬にして白くする雷光は

蝋燭や懐中電灯よりも頼りになる

天変地異かと思うような

不思議な時間であった

 

空から雨粒が不規則に

そして規則的に

少量から大量へ

大きさも粒も変えながら

天から地へとまっすぐに打ちつける

それもひとつの楽器のような

しかし大地には望んでいた餌のような

そんな雨であったが

どこかで

たくさんの涙にも思えて仕方なかった

 

わたしたちはデジタルを駆使してやっと一瞬を手に入れることができたのに

自然はもうずっとずっと前から自然を我がものにしていた

決していい気になっていたわけではないのだが

雨を喜ぶ蛙の大合唱が

皮肉を語っているようにも聞こえたし

真実を語っているようにも聞こえた

 

 

その地域を会場とした演奏会はほどなく終わり

周りは再び静寂と化す

あたかも何事もなかったかのように

 

そんな夜になっていた