つたわりとどけ。

日常と非日常のはざまから、伝え、届けたいことを個人で探求し、実践します。このたび不定期更新に切り替えました。

年末年始の読書感想文④ 北海タイムス物語 増田俊也:著 新潮文庫

かつて北海道には北海道新聞の他に、「北海タイムス」という新聞が存在していました。

 

現在はもうその新聞社はないのですが、自分自身がその新聞を配達していたことから、この名前が記憶に残っていました。そのためこのタイトルを目にしたとき、「読みたい」と思ったのです。

 

これもお仕事小説の類になりますが、600ページを超えるボリューム。

終始「熱い」お話となっていました。

 

帯には「こんな仕事 やってられるか!」というどこか決まり文句のような文言が書かれています。この心境は会社に入りたての人であれば誰もが思っても仕方のないことであり、昭和や平成、そして令和の時代でも共通しています。しかし上記のようなことを想ったとしても、その会社がイコールブラックであるとは限りません。職務上どうしても時間の縛りが長く、不規則な職場もありますし、その反対もあります。ブラックはどこからやってくるのか?はまた、別な論議にと思います。

 

 

主人公はかつての夢を諦め、北海タイムス社に入社します。全体研修を経て配属された部署は、自分が望んでいた場所でなかったことと、会社一行きたくない部署であったため、落胆とともに少々腐ります。学生時代付き合っていた彼女にウソをついたことも裏目に出てしまい、画にかいたような人生を歩き始めます。

 

そんなどん底の毎日から、浮上のきっかけが訪れます。

ただそれは期限付きのもので、主人公は必死で仕事を覚え始めます。

この時思ったのは「どのようにすれば仕事を覚えることが出来るのか」で、そのやり方は誰もが悩み、試行錯誤しているものだからです。試験などもそうですが、勉強の仕方も同様で、漠然とやっていては何も身に付きません。それをこの作品は痛烈に教えてくれています。

 

最近年のせいなのか、小説を読んでいて泣くようになりました。

それくらい、自分の環境に当てはめているのだと思います。

 

新聞社の仕事は決して楽などではなく、日々何かを削って生きているのだと感じさせてくれた作品です。作中には業務で使用する用語で会話している?こともあり、臨場感もありました。この本は新幹線での移動中に読んでいましたが、腰を据えて読んでいただいたほうがより一層面白みを感じる作品だと思いました。

 

 

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個人蔵