つたわりとどけ。

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年末年始の読書感想文⑥ 大雪物語 藤田宜永:著 講談社文庫

函館蔦屋書店を訪れた際、タイトルに魅かれて購入しました。

 

帯は北海道が誇る作家のひとりに数えられた桜木柴乃さん。

そこからわかる情報としては、どうやら短編集のようだということと、吉川英治文学賞受賞作品だということでした。

 

過去にも藤田さんの著作は読んだことがあり、その時の面白さの余韻を再び感じたくなることがあります。そんな訳でして、この作品の世界に飛び込んでみました。

 内容をかなりざっくり説明していきますと、「大雪」が引き金となり、雪のように行く先を阻んだり、雪解けという表現のように、これまで見えなかった、阻まれていたものがすうっと消えてなくなっていく・・・という人間の感情の流れなどを読みながら感じ取ることが出来る作品になっています。大雪と一言で表現していますが、豪雪という表現により近いものとして、この大雪物語は綴られていました。

 

 

さて過去にどれだけの大雪を経験したことがあっただろうか。

そう思い返したとき、1度だけとんでもない大雪の日にぶつかったことがありました。

 

それは歩道も道路も雪で埋め尽くされ、除雪車はおろか、バスさえも走っていない。

いや、除雪がまったくされていないため、車は走ることが出来ないのです。

バスの運行は終日運休になったため、自宅から地下鉄の駅までかなりの時間をかけ、そして足元が雪に埋もれながら、ザクザクと歩いていった記憶がよみがえりました。

 

 

本書に描かれる大雪という描写の大きさとして、自衛隊災害派遣があります。

それほど大規模な災害に出くわしてしまいますと、どうにかならないものかと考えながらもどうにもならない事実に対し、結構焦りを募らせるようです。

 

なるようになるさ、と言えればいいのですが、状況によってはそんな軽口も叩くことが出来ない。大雪は時間も距離も、そして相手の心のあたたかさまでも奪っていくいきもののように感じるほどです。そこに見え隠れするのは、やはり男女です。それはカップルの場合もあれば、親子の場合もあります。そこに見える感情の移り変わりをじっくりと味わい、自分の生き方に雪解け水の一滴でも活かすことが出来ればと考えてしまった作品でした。

 

 

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個人蔵