つたわりとどけ。

日常と非日常のはざまから、伝え、届けたいことを個人で探求し、実践します。

お酒は教えてくれる

Gin & It という名前のカクテルがあった。

それを知ったのは、伝説的なラジオ番組からだった。

 


土曜日の午後5時になると、馴染の店の扉が開き

紳士がこの酒を注文する

 


その光景が、格好良くて堪らなかった

 

 

 

そして その酒を飲みたくなって

重い扉を開ける 決心をしたことを思い出していた

 

 

 

 

 

 

このお酒は、ぼくにとっては「はじまりの酒」であり
同時に「重い扉を開けるための酒」でもありました

重い扉を開けた先に佇んでいたバーテンダー

メニューにその名が無く どうすればいいかとしばらく縮こまって黙り込んでいたぼくにやさしく声をかけてくださった

恐る恐る「ジンアンドイットは飲めますか」と尋ねたときの、なんとも言えない気持ちを忘れてはいない
それはどことなく、惚れた女性に思い切って気持ちを伝えることに似ていた

 

 

 

 

 

 

それから幾星霜経ったことだろう

いまでもこのお酒をいちばん最初に頼んでいる

 


あの紳士が言っていたように

「いつもの」

という、あのひとことで

このカクテルが出てくることが 今でも抱いているささやかな夢のひとつになっている

 

 

 

 


飲み始めたころは お酒が強すぎて すぐに酔っていた

それも飲み慣れてくると 度数が強いにも関わらず あまり酔わなくなっていた

ふしぎなことに ビールのほうが酔うようになっていた

 

 

グラスを傾け バーテンダーの所作を見学しながら

店内の賑やかさに耳を傾け 自分を空にする

グラスが空になっても 中の氷が華やかさを魅せてくれていた

 


ぼくは BARという空間と その空間に在るすべてが好きだ

その世界を もっと広げていくことが出来ればいいのにと いつも後悔する

バーカウンターの上で学ぶことは バーの外でも充分に通用する


バーの中ではつい背伸びしてしまう自分だが

それくらいの姿勢で 接することが出来たならといつも反省する

気づいたときは だいたいもう遅いけど

 

 

バーも カクテルも 大人になった自分にとってはとても大切な学校であり 教材になっている

今からではもう遅い とは思いたくない

今からでも 出来ることはあると信じている


カクテルは無限の可能性を秘めているように

人間という存在も 神秘性を具えているのだから

 

 

 

 

 

 

 

 

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※Gin & IT(ジンアンドイット)は実際にあるカクテルの名称で、マティーニの原型とされています。

 

レシピはドライ・ジン30ml スイート・ベルモット30ml カクテル・グラスにそのまま注ぎ、軽くステアするとある。
(参照はAVANTI COCKTAIL BOOK 2より)

 

すべてのお店で提供しているかどうかは定かではないが、お店によっては「ステア」タイプと「シェイク」タイプがある。

 

このカクテルを「いつもの」と称して飲んでいた紳士を主人公として放送していたラジオドラマは、永く愛されてきた「サントリ・ウェイティングバー・アヴァンティ」。

 

 

 

 

 

 

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