つたわりとどけ。

日常と非日常のはざまから、伝え、届けたいことを個人で探求し、実践します。このたび不定期更新に切り替えました。

年末年始の読書感想文② あぽわずらい(あぽやん3) 新野剛志:著 文藝春秋

あぽやんが続いていた。

 

 

これにはちょっと驚いた。

第1作を読んだのは10年以上前だったはず。

自然と手が伸びた一冊です。

 

航空業界の話になるのですが、シリーズ3作目は主人公が話を進めていくのではなく、主人公の周りにいる人物が主人公となった短編集になります。いまや定着したお仕事小説になるのですが、現代らしい企業の世知辛い世間事情も絡み、読んでいる人の共感を生む内容になっているのではないかと思います。

 

この本を知ったのはとあるラジオ。そこに招かれたゲストがおすすめの本として、この「あぽやん」を紹介されていました。その新鮮味を再び招き入れて読み進めました。

 

 

シリーズもので味わうことの出来る醍醐味は、その登場人物がどのように変化(または成長)していったかの変遷を実感できることにあります。このシリーズで主人公である遠藤は出社できないほどのダメージを負いますが、それで終わるわけではありません。

主人公がいない間でも世間は動き、仕事は回ります。誰かがいてもいなくてもいいという話以前に、仕事は進めていかなくてはなりません。主人公が退場しているそばで、いろんな立場の人がいろんなことを感じ、仕事をして生きていく様を見て、うなずきながら読んでいました。空港業界、旅行業界に限らず、どの現場でも「経費節減・売上向上」を文句にしていると思いますし、それに異議を唱える考えはありませんが、その先には何が残り、何が生まれていくかをしっかり見ていかなくてはならないんだなと感じました。

 

 

どのような環境でも、成長はできます。再び歩き出すこともできます。

それは力強い一歩なんかじゃなくてもいい。

いつもの一歩だっていいんだ。

主人公:遠藤の再出発を見て、そんなことを感じました。

 

 

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八雲町立図書館蔵