新聞で写っていた店先は
かつて自分が立っていた場所で
あの日のぼくはそこで
大きすぎる抱負を語っていた
笑顔の裏に不安を隠して
心のいちばん奥に覚悟を潜めて
高校のクラスは3年1組
席は確か いちばん前だったと思う
その時は学級委員長をやっていて(またはやらされていて)
使えねぇ奴と白い眼を向けられながら過ごしていた
だからもう今は
高校の卒業アルバムは捨てている
あのビルの3階にかつて勤めた職場はあって
そのど真ん中の席でコントロールをしていた
朝早く来て 終電近くに帰って
時には乗り合いタクシーで帰る日々がありながらも
必死に働いてた
あの席はもうないだろうけど
あの席があったから今があるとやっと思える
それから居場所を転々とした
どこかで選択を間違えたのではと思うほどだ
こんなはずじゃなかったと間違い探しをしながら
いい年してバイトなんかしてんじゃねぇと
そこでまた白い目で見られながら
挨拶しても無視する店員がいる駅前の百貨店で
ひたすら耐えるように座っていたこともあった
生きる場所を変えたのなら
それまでいた場所にはもう戻れない
そんな気持ちを持ちながら
空が広い場所までやってきた
ここもやがて かつていた場所になるのだろう
もうそこにいなくなったことであなたの顔を見る機会はすごく減った
その反面あなたの近くにいたいと想うようになった