春を告げた日
世界は風に包まれていた
あらゆるものをもぎ取り
あちこちに飛ばしていく
季節を告げる風は
いつもよりは少し強めだった
風が吹いているあいだは会話もままならず
聞こえるべき音もかき消されてしまう
五感のひとつがままならないのをよそに
過去に押し込む力のみが見えない先に立っている
山から吹き下ろすそれは
歩みの足を止める
それはもう先延ばしではなく
意思とは裏腹に
ただそれはいつまでも続きはしない
やがて強さは引いていき
背中を押してくれるくらいにまで変わっていく
その息吹を纏い
きみのところへ飛んでいく