つたわりとどけ。

日常と非日常のはざまから、伝え、届けたいことを個人で探求し、実践します。

令和2年4月の読書感想文① クローバー・レイン 大崎梢:著 ポプラ社

外気が寒くなったら何だか体調も下降気味。

 

年度末・年度初めはなかなか読書が進みませんが、ようやっと読み終えることが出来ました。

 

 

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クローバー・レイン 大崎梢:著 ポプラ社 八雲町立図書館蔵

 

 基本軸は出版社の人間(特に編集者)なのですが、そこに作家さんや作家さんのご家族、そしてライバル社等の構図が興味深く思いました。

 

出版業界の細部を見たような感じになるこの文章は、「じっくりと読ませる」重さを感じさせます。それはこの作品自体が、物語のスピードをあらかじめ決めているかのようです。

 

出版の世界は、文章を書く人であればひとつの憧れなのかもしれないのですが、実際はそこにも競争の世界があり、経済の世界がありました。どんなに面白い作品が転がっていたとしても、それが売れるかどうかはまた別問題。どうしても売れっ子の作家さんが重宝されます。そして、単行本から文庫になるときのプロセスも垣間見ることで、とても熾烈な世界だと感じました。

 

そういった世界の中で、主人公は熱血的で、かつ信念の強い、異端に少し寄った社員です(と感じました)。社会において異端は煙たがられ、大きな流れからは逸脱されがちになるのですが、この主人公はしっかりと業績を残しているため、そこまで反発を受けることがありません。しかし、落ち目の作家が書いた作品に心を奪われ、それまでとは違う何かに火が付きます。そこから先の展開は、経験を積んできたであろう社員とはなかなか思えない浅はかさが露出し、何度も恥を覚えるほど。それでもめげずに刊行までこぎつけるそのタフさには、何らかのメッセージが込められているように思いました。

 

お仕事小説というジャンルが確立されてから、出版業界を題材にした作品も多く世に出ることになりました。その中でもこの作品は、胸が熱くなるだけではない、何か特別なものを植え付けるものだと感じました。