タイトルが目に留まり、帯を見て購入した本になります。
帯にもある通り、テレビアニメーションにもなった「響け!ユーフォニアム」の著者による作品です。
なおこちらの本は、北海道砂川市にあります「いわた書店」にて購入しております。
愛されなくても別に 武田綾乃:著 講談社 個人蔵(砂川市いわた書店にて自選書)
帯の裏に衝撃的なひとことが書かれています。
「愛情は、すべてを帳消しにできる魔法なんかじゃない。」
これはいったい何を意味するのだろうと読み進めました。
主な登場人物は3人で、舞台は主人公が通う大学と、バイト先のコンビニを中心に話が進んでいきます。ちなみにこの本は3章からなる作品で、短編集とも、長編ともとれる構成になっております。
主軸となる登場人物(いずれも女性)は、ありがちなものと、その人特有の悩みや背景を抱えています。その設定や展開が秀逸で、かなり読み込ませてくれます。帯の裏に「本当に面白かった・・・」というコメントがあったのですが、話の内容が痛快とか爽快という雰囲気をはらんでおらず、面白さとは何なのだろうと考えてしまいました。
この作品が問いかけているものは
「愛」とはいったい何でしょうか?
「居場所(または友達)」とはいったいなんでしょうか?
「自我」とはいったいなんでしょうか?
になっていて、これは読んでいて考えさせられました。
登場人物は決して恵まれた環境にはおらず、それぞれの課題でもがいています。
どうにかして脱却する場所を、キャンパスライフに託していたのではないか、と思わせる流れを感じます。
これが自分の思う予定通りであればいいのですが、この世界には必ず他者が関わります。そうなりますと、その予定は大体変更になります。
他者からの横やりによる強制変更を経験しながらも、いつしかお酒が飲める年齢になっていき、前しか見ることのできなかったときから少し冷静さを手に入れます。そこから生まれるものはエゴなのかもしれませんが、そうではないかもしれません。彼女たちが抱える悩みや伏せていた事実は、世代の関係はないように思いました。移住した身の人間にとって、何かからの脱却も、伏せている事実も少なからずあります。あがきながら生まれてきた自我はどのような展開を生むのか、この作品同様先が楽しみだなと感じさせます。
この作品は間違いなく会心の作で、自身にも投影しながら考えることのできる作品です。
ユーフォの原作は読んだことがないので、こちらも読んでみたいなと思いました。