つたわりとどけ。

日常と非日常のはざまから、伝え、届けたいことを個人で探求し、実践します。

令和3年1月の読書感想文① ニュータウンクロニクル 中澤日菜子:著 光文社文庫

短いお正月休みの合間に読んだのですが、かつて団地(市営)に住んでいた頃の記憶が瑞々しく蘇りました。

 

 

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ニュータウンクロニクル 中澤日菜子:著 光文社文庫 個人蔵

 

「若葉ニュータウン」という郊外の人工都市を舞台とした短編集。

時代は1971年から始まり、10年の時を刻む毎にその時代の世相を映した話が展開されています。

 

それぞれの時代には背景に象徴されるものがあり、つい自分の頃はどうだったろうかとなぞらえてしまいます。

 

自分も小学校3年の冬から市営団地に住み、そこから20年ほど暮らしました。

その後結婚に合わせて団地(実家)を出ましたが、この若葉ニュータウンのような活気とはまた違った、人がいることの賑やかさがあったように思います。

 

町内会は実際どうだったかわかりませんが、近所づきあいは当然のようにありました。

昨今は近所づきあいなどを避ける傾向がありますが、今ではマンションだけで町内会(自治会と言うかも)が設立される時代です。人付き合いを減らすことはできると思うのですが、皆無にすることは不可能です。当時はそんなに騒がしいことはありませんでしたが、この物語を読んでとても考えさせられました。

 

ひとつの拠点(団地)がある限り、住む人は移り変わります。

そこにある気持ちや思いも、時代とともに変わっていくのか、と。

帯には、「私たちの歴史。」と書かれています。

自分が住んでいたあの団地も、ひとつの歴史であり、その中にいたんだという実感を持たせてくれる作品でした。