令和3年1月の読書感想文⑩ こっちへお入り 平安寿子(たいらあすこ):著 祥伝社文庫
1月は堰を切ったように本を読んでいます。
時には勢いも必要のようです。
砂川市にあるいわた書店で自選してきた本も着々と消化しています。
今回はこちらの作品を読みました。
こっちへお入り 平安寿子(たいらあすこ):著 祥伝社文庫 個人蔵
北海道砂川市 いわた書店にて自選し購入
装丁はまさしく高座の一部分を切り取っていますね。
この小説は、落語を題材としたものになります。
落語は少なからず聞いていて、札幌で開催された寄席にも何度か行きました。
主にテレビで落語に耳を傾けていますが、ひとつの演目でも演じる人が変われば、その演目の彩も大きく変わります。それが落語の醍醐味のような気がします。
話の筋としては、まったくこれまで落語に縁のなかった主人公が落語の世界に少しずつ入っていく、というもの。その傍らで社会人生活もあり、実家の親や兄弟との問題、友人との距離などがリアルに描かれています。その荒波のような日常に対し、落語という変わり種の対抗手段(のようなもの)を以って、様々な発見をしていくといったものです。
ただ本書、落語とはどんなものだろう?とお思いになる読者向けに解説ページを設けています。加えて作中に実在した落語家さんの名前が出てきたりします。CDボックスセットのくだりが何回も出てくるので、ちょっと欲しくなるほどです。
「落語は教養」という一文がこの作品には込められており、読み進めていくとその意味が理解できます。落語の演目には大層たくさんのものが詰まっており、勉強につながるというものです。そしてこれは現代社会にも活きてきます。練習(稽古)を繰り返してその演目を知っていくことになる主人公はどのような生活を送っていくのか、その展開にも注目です。
もったいなくて、敢えてじっくり読んだ作品でした。
いわた書店でのお話はこちら