つたわりとどけ。

日常と非日常のはざまから、伝え、届けたいことを個人で探求し、実践します。

令和3年2月の読書感想文④ ゴールデン街コーリング 馳星周:著 角川書店

久々に馳さんの著書を読みました。

 

受賞報道があったからかな?

 

いえ、もともと馳さんの文章は好きですよ。

 

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ゴールデン街コーリング 馳星周:著 角川書店 八雲町立図書館蔵

 

 

 

読んでいて、そして読み終わって思ったことは、「昭和の空気が好き」な自分がいるということでした。

 

どうやらこのお話は、馳さんの大学生時代の経験を素に書かれたものであると推測します。場所はゴールデン街にあるバー。その環境は決して良いとは思えないものの、ゴールデン街に通ってくる人たちのいわゆる「人情」は、決して悪くないと思えるほどでした。

 

主人公は本の虫で、同人誌に記事を書いていることから、出版社の目に留まり、記事の執筆を依頼されます。その話は後になってからなのですが、それまではひたすら人間関係を描いている気がします。その中でも印象的なのが、飲み物や食べ物。この時代特有という訳ではないのですが、どうも個人的に印象が強く残ってしまいました。

 

 

そして、恋の話もあります。

恋をはじめとした、様々なことに対して揺れ動く感情がの体温が直に伝わります。

 

その感情の変遷は、痛いほどわかります。同じ男子だからなのかもしれません。

最初から何もかも得意で上手な人はいない。そんなことを教えられたシーンでもありました。

 

最終的に、主人公はバイトを辞めます。

 

その後日談として、作者が作家になってからのエピソードが最後に綴られているのですが、作者にとってこのゴールデン街は好きな場所であり、また嫌いな場所でもあったことがわかります。かつてバイトで通っていたお店はまだあり(当時の店主は故人となっている)ましたが、空席があるにも関わらず入店を断られてしまいます。よくあることなのだそうですが、そのシーンが、ゴールデン街の日常であり、好きであり嫌いでもある一面なのではと感じました。