つたわりとどけ。

日常と非日常のはざまから、伝え、届けたいことを個人で探求し、実践します。このたび不定期更新に切り替えました。

令和3年2月の読書感想文⑤ 彼方の友へ 伊吹有喜(いぶきゆき):著 実業之日本社文庫

第158回直木賞候補作と帯にあり、合わせて戦時中を舞台とした作品となっていました。

 

 

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彼方の友へ 伊吹有喜(いぶきゆき):著 実業之日本社文庫 個人蔵

北海道砂川市 いわた書店にて購入(自選書)

 

 

読み終わって気づかされたのですが、この作品は実話をもとにした作品です。

物語は、既に老いたひとりの女性の元に来訪者が来ることから始まります。

そこからは人生の回想のように、昭和の戦時中の、ことこまかい青春の1ページをめくる展開となっております。

 

 

この作品、NHKの朝のテレビ小説になってもおかしくないほど。

主人公は女性なのですが、力強く生きる様は、昭和の時代だけに通じるものではなく、令和のいまだからこそ、改めて知っておきたい姿勢でもあります。

 

巻末には書き下ろしスピンオフも収録されており、満足の一冊です。

 

題材となった舞台は、実業之日本社がかつて刊行していた雑誌「少女の友」。

刊行は1955年まで続いたそうです。

この雑誌を囲むようにして展開されるドラマは、今の世の中においては失われてしまった何かを持っているように思います。もちろん当時の状況を知っているわけではありませんが、描かれている人物の心情などはすごく胸に刺さりました。当時を知る人であれば、猶更のことと思います。

 

 

著者の伊吹さんと言えば、「四十九日のレシピ」がメディアで取り上げられたこともありました。僕は伊吹さんの「Bar 追分」シリーズを持っているので、意外と身近にいる作家さんでした。

 

この作品は、たくさんの人に読んで欲しいですし、読み継がれて欲しい作品でもありました。