つたわりとどけ。

日常と非日常のはざまから、伝え、届けたいことを個人で探求し、実践します。

【詩】雪の下には

あれだけどっかりと積もっていた雪が

 

気温の高さと陽の暖かさでみるみるうちに減っていく

 

それはまるで際限なく積み上げられた書類の山が

 

どういうわけか1枚また1枚と処理済みになっていくようだ

 

季節が移っていく中であれこれと憂慮していたことが

 

緑が見え始める頃には多少どうでもよくなってしまう

 

なんだか薬の副作用のようだ

 

 

 

雪は日に日に融けていくけれど

 

雪と地面との間にはわずかな隙間が出来ていく

 

それは何だか洞窟の入り口のようで

 

現実逃避をしたい僕は冒険心を掻き立てられる

 

決して逃げたい訳じゃない

 

興味のほうが勝っているだけだとひとり呟く

 

しかし実際には入ることはできない

 

雪はまだとても重くのしかかっている

 

現実以上の重さがそこにはある

 

 

 

 

雪の下から様々なゴミが出てくる

 

中には誰かの落とし物のようなものまで出てくる

 

儚い恋の断片や

 

一生懸命生活している記憶の一部

 

喜怒哀楽の切れ端が

 

そこら中から生えてくる

 

かつてあれほど隠したかったはずのものなのに

 

自然は容赦なく白日のもとに晒す

 

神様は人間には優しくしない

 

神様は何物にも優しくはしないのだ

 

 

 

土の匂い

 

水の匂い

 

様々な匂いが立ち込めて

 

春はその存在を宣言する

 

 

そうしてみんな目が覚める

 

それは現実世界への誘いだった