つたわりとどけ。

日常と非日常のはざまから、伝え、届けたいことを個人で探求し、実践します。このたび不定期更新に切り替えました。

【詩】2時間45分08秒

シネコンの3番スクリーンDの5番席に座って映画を観た

 

スピーカーから吐き出される音楽とセリフは衝撃的で

 

そして情熱的でもあった

 

この空間はまさしく非日常の空間で

 

誰もが夢を抱いて何かを誓う空間でもあるような確信を持てる

 

椅子の座り心地は映画館によって異なるけれど

 

やろうと思えばここで一晩過ごすことが出来るだろう

 

 

 

エンドロールを眺めながらテーマ曲を聴いている

 

ふと琴線に音が重なり

 

錬金術のような鳥肌が立つ

 

どうして心情がこんなにも持ち上げられるのだろう

 

伏せていたわたしの心を焙り出すその人が歌う歌の何と容赦ないことか

 

あの日を振り返ってわたしはDの5番席で諦めきれない涙を流す

 

 

 

この週末であの街の桜は見ごろが過ぎてしまうそうだ

 

わたしの町ににはいつ桜が咲くだろうか

 

既に別れと出会いの季節は過ぎているはずなのだけれど

 

わたしは未だにあの別れの日で止まっている

 

それから一度も会うことはなく

 

電話で数回話してあとはメール

 

相手の面倒臭さが文面からも見て取れた

 

態度を変えれば相手も態度を変える

 

それくらい単純な出逢いだったのだろうか

 

あの人を活かす言葉を投げかけたわたしは無意味だったのだろうか

 

どうしても諦めきれなくて

 

目には見えることのない 重さを感じることのない鎖に後悔を繋いでいる

 

 

 

もう忘れてしまったあの人の顔

 

もう忘れてしまったあの人が作ってくれた料理

 

もう忘れつつあるあの人と過ごした時間

 

もう忘れつつあるわたしの存在

 

でも

 

わたしが忘れられようともわたしは決して忘れたくはない

 

忘れたくはないのだ