この作家さんを知ったのは本作ではなく、その時出ていた最新作。
たしか
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なかなか見ない苗字でしたので、近くの書店でほかの作品はないものかと探していたら、今回読んだ本と出逢いました。
凛(Rin) 蛭田亜紗子(ひるたあさこ):著 講談社文庫 個人蔵
主人公は就活生(女性)なのですが、旅行先の北海道で開拓期の歴史に触れます。
しかしその歴史は華々しいものではなく、辛く悲しい、そして逞しいものだったのです。この歴史の部分に物語の多くを割いていて、暗いテーマながらも引き込まれます。
貧困にあってもプライドはあった
開拓期の北海道に関する資料は数多くあると聞いていますが、北海道の開拓を行うため、国はいろんな人を北海道に集めたといわれています。新天地を求めて来た労働者もそうですし、罪人も当てはまります。そしてその中には、低賃金で労働させられる人たちも多くいたと聞きます。話では、現在日常的に使っている国道は、そういう人たちがその原型を形作ったとも言われています。それを考えれば、どれだけの労力を投入したのでしょうか。
ただ、このような中でも志を高く持つひとたちはいました。開拓期の話では、過酷な労働を強いられる男、そして遊郭等で身を売る女が描かれています。しかし不思議なことに、ページをめくる指は重くなることはなく、却って熱を帯びてきました。
歴史を人生に重ねて考えてもいいと思う
終盤では主人公の就活生は就職先を得ます。そこに旅先の北海道で触れた、このような歴史が強く影響していると言えます。本作の中ではこの主人公に彼氏がいたのですが、勤務先でうつにかかり、会社を辞めざるを得なくなっています。その後復帰の道をたどるのですが、生きることや働くことを考えさせられるシーンだったなと、読了後に感じていました。