つたわりとどけ。

日常と非日常のはざまから、伝え、届けたいことを個人で探求し、実践します。

令和4年7月の読書感想文⑭ 名も無き世界のエンドロール 行成薫:著 集英社文庫

第25回小説すばる新人賞受賞作。

「史上最大のプロポーズ大作戦」が気になっていたのだと思います。

 

 

名も無き世界のエンドロール 行成薫:著 集英社文庫 個人蔵

 

 

小学校時代からの腐れ縁である主人公とその友人。

 

30歳になったころ、その友人は会社の社長になっていました。

そしてその友人社長はドッキリに引っかかってばかりの主人公を巻き込んで、社長の彼女に対するプロポーズ作戦を決行します。

 

というのが大まかなあらすじなのですが、展開を読んでいくとなかなか考えられたものだなと思います。特に「一日あれば、世界は変わる。」という文句にはグッときました。

 

本書は回想も含まれているため、状況の理解にやや時間を要するかもしれません。

しかしながら、この友人同士の会話はまさしく青春であり、かけがえのない日常をよく表しています。いくつかの仕組みを携えて書かれた本書は、一気に読み込める若さがあります。ちょうど今頃の、湿気を含んだ、温い空気が疾風となって体を突き抜けていく、そこに爽快感を味わうかのような経験ができる作品だと思います。

 

 

本書は表題作のほか、文庫書下ろしの「ポケット」を収録。

新人賞受賞作家の気概とテクニックが冴えわたる作品となりました。