つたわりとどけ。

日常と非日常のはざまから、伝え、届けたいことを個人で探求し、実践します。このたび不定期更新に切り替えました。

令和4年8月の読書感想文② つまらない住宅地のすべての家 津村記久子:著 集英社

大衆小説のような、またはミステリーのような、不思議さを漂わせたと感じた作品でした。

 

つまらない住宅地のすべての家 津村記久子:著 集英社 個人蔵

 

設定として舞台となる住宅地の地図が出てきます。

 

導入として、この住宅地からほど近い場所にある刑務所で、脱走事件が発生します。その脱走犯がどうやら自分たちの町に潜んでいるらしいという情報が流れ、住宅地に住む住人が協力して、その事態に立ち向かいます。それまでは何ら興味を示さなかった「隣人」についてのあれこれが、この出来事をきっかけに明るみになっていき、物語は劇的な展開を迎えます。

 

読んでいて思ったことは、日常にある、お隣さんというものを対象に、住宅地という狭いと感じる世界でここまでの展開を見せてくれるのかという驚きです。津村さんの作品は他にも読んだことがありますが、押さえておいて損はない作家さんです。

 

昭和の時代では、隣人とのお付き合いは当たり前にありましたが、平成と令和では縮小傾向にあったようです。現在、地方に住んでいますと、ご近所づきあいは当たり前に発生しており、普通に対応しております。あるところにはありますし、ないところにはない、そんな感じで、世間は息をしているのです。