つたわりとどけ。

日常と非日常のはざまから、伝え、届けたいことを個人で探求し、実践します。

令和5年3月の読書感想文⑪ アイの物語 山本弘:著 角川書店

個人としてこの物語はなくてはならないものとなっており、機会があれば目を通すようにしています。既に故人になってしまいましたが、かつて放送されていた「サントリー・ウェイティングバー・アヴァンティ」というラジオにて、目黒孝二さんが紹介されていたのが本書を手に取るきっかけになりました。

 

 

アイの物語 山本弘:著 角川書店 個人蔵

 

 

機械(アンドロイド)が人間に語る、この世界のすばらしさと残酷さが詰まっています。

 

当初読んだ記憶は朧げに残っていたのですが、コンピュータ技術が発展している昨今において、今一度読んでおいたほうがいいのではないかと思い、手に取りました。

 

本書は7話構成で、インターミッションを挟む形式で機械とヒトとの会話が進んでいきます。

 

この7話の内容が現在においても充分通用するといいますか、かなり現実味を帯びてくる内容となっており、先見の明というのか、懸念というのか、進むべき道は最初からこうだったのではないかという思索に溺れてしまいます。

 

反面、人間はある意味「成長していない」と感じます。それは「理解を拒んでいる」ようにも思えます。都合よく使えるときは使い、何かしら不審な動きがあれば糾弾する。それは何も対機械に限ったことではありません。人間の恥を本書を通して改めて知るとともに、AIがもたらす可能性も充分に知ることが出来ます。そういう意味では、かなり前に刊行された本書はかなりの完成度を持っていた、ということになるのではないでしょうか。

 

 

個人的なことですが、山本弘さんを知ったのは「妖魔夜行」というシェアード・ワールド・ノベルズ(角川スニーカー文庫)を通してでした。SF作家ということもあり、他の作品も高度な魅力を帯びています。SFはそんなに読んでいないのですが、この人の作品からSFに触れ、他の方の作品も触れてみるという連鎖反応をもたらしてくれました。

 

この本は、また数年後に読み返したいと思います。