ポプラ社小説新人賞受賞の作家さんです。
ニキ 夏木志朋(なつきしほ):著 ポプラ社 個人蔵
帯の内容はさほど気にならなかったのですが、最後の最後で
「そういうことか」
と至りました。
最初は高校生に焦点が当てられます。
周りから浮いてしまう存在だった高校生は、ひとりの教師に関心を寄せます。
そこからうまれるやりとりから、あまり知られたくない秘密を知ることになり、教師と生徒の関係は逆転した、と読みながら思っていました。
この教師は、周りには言えない趣味を持っています。
しかし、その趣味(嗜好)を自覚したとき、その教師は悩んだそうです。
外野はそれを面白おかしく表現すると思いますが、本人は至って真面目に「悩んで」います。それを受け容れての、その教師の現在がここに綴られています。
だからなのか、教師のいうことは取り繕いではなく、理論的になっています。
もちろん、ご自身の立場をわきまえた発言もします。それがかえって「開き直った」表現に聞こえることもしばしばあります。
それはこの教師に限らず、わたしたちにもあるのではないかという恐怖を憶えました。
物語の最後ですが、予想だにしなかったことが起こります。
高校生の用心深さ、そして若さがもたらしたひとつの騒動。
急転直下するクライマックスを、どうかその目でご覧いただければと思います。