ロードノベルというジャンルがあり、一定の支持者がいるんじゃないかなと思うジャンルです。これはまた独特の世界が広がるロードノベルです。
黄昏旅団 真藤順丈:著 文春文庫 個人蔵
読んでいてかなり独特な、人の内面にえぐり込んでいく印象を持ちました。
本の情報を確認すると、雑誌連載後に数年かけて改稿したとのこと。
それではまったくの別作品ではないか?と思えるほどの熱量です。
それほどに、ここに描かれている冒険の重さが大切にされてきているのかなと感じました。
社会の底辺と言いますか、放浪生活を送っていた主人公。
その中で不思議な男「タイゼン」と会い、道を歩くことになる。
その道とは「心象風景」というものであり、現実世界とはまた違うものとなっている。
それはその人だけに刻まれた歴史であり、事実である。
その事実にぶち当たるたびに、衝撃が主人公に襲い掛かる。
何とも摩訶不思議な世界なのですが、なんか死者がその真実を見せられているようにも思える展開で、ちょっと戸惑いながらも読みました。
実際、依頼を受けて特定の人の「道」を歩きます。
それは、その人のすべてを見て歩く、ということになります。
つまりは抱いていたイメージが崩れる可能性があり、見方がまったく変わってしまう可能性をはらんでいます。
こんな独創的な小説は、中々お目にかかれないと思います。
その一方で、自分の道を歩んだ人は、どう思うのだろうと震えてしまいました。