つたわりとどけ。

日常と非日常のはざまから、伝え、届けたいことを個人で探求し、実践します。このたび不定期更新に切り替えました。

【詩】不通の世界

固定電話が鳴らない

 

携帯電話だって鳴らない

 

そんな場所が本当にあるんですかと誰かが問う

 

 

固定電話はなくても

 

携帯電話がつながらないというのはそうそうない

 

でも実際にはある

 

 

見えない信号が届いていない場所なんてごろごろさ

 

 

 

 

 

何も届かないことを知ると

 

何故か自由を得たような感覚になる

 

誰からの連絡を受け取ることが出来ないのは考えてみると大変なのだけれども

 

束の間の静寂は苛立つ月末には必要なものだった

 

よく耳を澄ませていると

 

蜜蜂が花から花へと渡り歩く音や

 

牛の親子が話している声

 

川から水がじゃぶじゃぶ流れている音など

 

機械的な音など一切聞こえていなくなっていた

 

 

 

これこそが本来の世界だと確信した

 

 

 

 

メールやSNSのコメントやら既読も未読も気にしない

着信履歴やファックスの確認なんかも無視

見えないものにつながっている状態から切り離して

身ひとつで今いる場所を闊歩したい

 

 

 

 

何かに繋がっている日常で

何にも繋がっていない瞬間を求めながら

何かからの反応を待ってしまっている自分がいる

 

電気が流れている高圧線の下で

鉄塔越しに真昼の月シロツメクサの草原を眺めていた

【詩】ぼくで終わりにする

夕焼けの明るさが草原の色を金一色にしていく

とても幻想的な光景だった

それなのにぼくは

アプリを開いてトークルームから退出するボタンを押していた

ほんとうは何かひとこと言ってからのほうがよかったかなと思いながら

 

たとえ絶望的だとわかっていても

自分が何かを言わないとという気持ちが強い

そんなんで引き戻せるとは思ってもいないし

却って嫌悪感が強くなることは明白だけれども

負け犬の遠吠えのようなひとことでも

ごめんなさいとかありがとうといったありきたりなことばなんかを書いてしまう

それは相手の反応を期待してのことではなく

自分の中で区切りを何とかしてつけたいからなのだろうとどこかでわかっていた

だからぼくで終わりにしようとしてきたんだ

 

多くの人はもうそれが終わりだとわかっていたら何もすることはないだろう

いわゆる自然にというやつなのだけれど

それは自然ではなく意図的なのだということを知らないのかもしれない

だからぼくは敢えて発信してきた

失礼だとも 今更何なのだとも言われてきた

そして自分の立場の優位性をこちらにぶつけてきては

唾を吐くように社交辞令を並べ立て

自分の無礼さに正当性の盾を構えて隠す

友情を結んだ人も 本気で好きになり また愛した人も

環境が変わってしまえばこんなものかと思わせるほどの変貌ぶりだ

 

ひとり またひとり

ぼくで終わりにしていく人は増えていく

それはとても悲しいことなのです

だってそれは起きてほしくないことなのですから

しかしながら実際はそううまくもいきません

いつしか疎遠になって

ごくたまに街中で会ったとしても

他人のふりをされたならば

絶望に近い傷を負います

ああぼくはヘタレだなと実感しながら

その人のアイコンをそっと消すのです

 

 

もう 終わりにしよう

ぼくで終わりにしよう

 

ぼくで終わりにできたら

もう ほかの人はそんな気持ちにならなくていいのにね

【詩】詩を詠む理由

詩を知るきっかけは たしか小学校のとき

国語の授業で 詩を作るというものがありました

その時は何が何だかわからずにいて

気に留めることもありませんでした

 

再び詩に出会うことになったのが大学生のとき

その頃から 周りには詩が溢れるほどありました

どうにも他人から諸々の相談を受けることから

手紙を多く書き そして詩を多く書くことになりました

それが詩への目覚めでした

 

当初は 誰かを励ますための詩を書いていましたが

自身の恋愛が下手なこともあり

そして未練や後悔が結構尾を引くことも多いことから

そのような詩にウェイトを置くようになりました

だから自然の風景などを詠む詩に憧れましたし

心情を吐露すること以外の詩が書けることを目標としていましたが

中々その井戸から抜け出すことは出来ませんでした

だから 片思いや終わった恋のことを詠むだけになっていました

それは恥ずかしながら 今も続いています

何故なら 不思議と言葉が出てくるからです

ほんとうに恥ずかしいことです

それでも書いてしまうのです

それが私を詩人にするからです

この世の中には

そんな自称詩人がいるものです

 

 

どうにも明るい詩を書けなくなった時期がありました

それは自身で死ぬことを何度か選んだことが関係しています

よく闇と比喩をしており

沈んでいくさまを書いていきますが

それで一瞬でも救われるわけなどなく

ただただ酔いが深くなるだけで

自分自身の愚かさや儚さを悔やんできました

時折今でも顔を見せることがあります

それと同時に思うのは 自分はこの場所にいないほうがいいのではないかというもので

どうにも相手の反応を気にしてしまう性格のため

決して相手を傷つける意図はなくても

結果として相手を傷つけてしまい 嫌われてしまったと感じたのなら

途端に自分のあらゆるものは地に落ち そして自身の存在を否定してしまいます

とても面倒な人間だと自分でも思います

 

移住をしたことによって 少しだけ詩の内容が変わってきたように思います

それはとてもよい反応だと感じています

相変わらず殴ってやりたいほど愚かな自身の性格に振り回されているものの

自分にとって新しい境地の詩を書こうと挑むことが出来ています

日々いろんな後悔の念が襲ってきますが

日々の仕事で泣きべそをかいても

日々の出来事で一喜一憂して咽び泣いても

詩を書く手は止めたくないのです

酷く不器用で不格好ではあるのですが

そのような表現しかできないのですから

しょうがないなと赦していただければ有難いです

 

詩は 恋文に似ていると思います

それだけ辛い気持ちを詠い

それだけ歓びを詠い

それだけ後悔や懺悔の念を詠い

それだけ今しかない一瞬を詠っています

 

阿呆だなこいつと思っていただいて構いません

そんな人間が詩を詠んでいます

前向きな気持ちから生まれた詩もあれば

徹底した後ろ向きの気持ちが呼んだ詩もあります

 

止めどなく伸びてくる感情を

これからも泥臭い詩にしていくことを

離れたところから見ていてください

【詩】ページを開くことはできるか

明日生きるかも

 

明日死ぬかもわからない

 

まさしく霧の中だ

 

 

 

 

仲が良くても

 

喧嘩をしても

 

好きになっても

 

嫌われても

 

明日がどうなるかなど誰にもわからない

 

カードをめくってもそこには何も書かれていない

 

どうして他人の予言を信じることができるだろうか

 

結局はそこに希望を見たいだけなのだと気づかされた

 

 

 

昨日にはもう行けない

 

明日にはまだ行けない

 

割り切りも時には大事なのだろうけれど

 

わたしはもっと悪あがきしたい

【詩】蘇生

行くな

 

行くんじゃない

 

そっちを見るな

 

こっちを見ろ

 

折角生まれてきたんだ

 

まだいくな

 

行くには早すぎる

 

こっちにこい

 

待っているんだぞ

 

だからそっちにはいくな

 

 

 

 

 

がんばれ

 

がんばれ

 

がんばれ

 

がんばって呼吸しろ

 

がんばって目を見開け

 

がんばって生きろ

 

がんばってくれ

 

がんばってくれ

 

 

 

 

頼むから行かないでくれ

 

お願いだ

 

こんな哀しい現場にはまだ出会いたくない

 

これは人間のエゴだけれども

 

できるだけ見たくないんだ

 

お願いだから

 

明日には元気になってておくれ

【詩】飽きないための

毎日同じ場所にいて

 

毎日同じ仕事をしていると

 

こんにちの人間はどうも面白みを失くしてしまうようだ

 

そうして新たな刺激を求めるという名目で

 

かんたんにその場所を離れてしまう

 

そうして移った先でもまた

 

早々に面白みを見失ってしまっている

 

 

 

 

 

そんなにそんなに同じ場所で長い時間を過ごすことに面白みを感じないのだろうか

 

とても不思議に思い そして考えることにした

 

 

 

毎日同じ人と顔をつきあわせ

 

毎日同じ場所に座り そして同じ作業着に着替え

 

毎日同じような仕事をし 同じように休憩を過ごし

 

仕事が終わってからも同じようなことで固定化されてしまっている

 

目が覚めてから目を閉じるまで同じようなことばかり

 

文字にしてしまっては面白みに欠けてしまうが

 

目の前に広がる光景は 果たして毎日同じなのだろうか

 

実際は同じことなど何もないはずなのに

 

 

 

 

物事の機微を見つめよ

 

些細な変化に反応せよ

 

見えるものから 聞こえるものから伝わってくるものの違いを

 

季節の色や匂いが醸し出す雰囲気というものを

 

様々な条件が複雑に混ざり合い 醸成されることで今日はあると思い給え

 

同じことなど何もない

 

同じことだと思うようになったときは 見つめ直しを図る時ぞ

 

天候にも変化があるように いきものという存在にも変化がある

 

その些細な変化で早まってしまってはならぬ ということなのだ

 

 

 

人間をもっと見つめよ

 

人間以外のいきものももっと見つめよ

 

季節を感じよ

 

天候を感じよ

 

飽くることなく日常を費やすことの極みは その日常の中にこそ秘められている

 

非日常といった幻想ではなく 現実に生きよ

 

心はそれに応えてくれるから

【詩】ぼんやりとした想いに

「この街を案内してよ」

 

そのように問いかけられたとき 果たしてどこを案内するだろうか

 

あんな場所やこんな場所があったなと思いながらも

 

ではどこに連れていけばいいかという問いの回答には結びつかない

 

それはどこかわかっているようで実はわかっていない

 

人間特有のスキルなのだと思った

 

 

 

「愛してる」ということばあるけれど

 

とても抽象的な言葉だと思っている

 

それを現実的に、そして具現化するというのはひどく難しく

 

そしてその実態は人それぞれだから

 

果たしてどれがそれにあたるのだろうと首をかしげてしまうこともある

 

本当はわかってはいないけれど

 

自分でこうだと決めたいという気持ちや

 

これまでの経験からこれこそという判断で決定を下していく

 

これはこういうものだと決めていくのは

 

人間特有のスキルだと思った

 

 

 

 

「はじまり」も「おわり」も

 

ほんとうはそんなところがないはずなのに

 

どこかでそれを決めたがる

 

そうすることで区切りをつけたいからなのか

 

かかわっていきたいと思ったときにはずっと前からはじめをつくり

 

もうかかわりたくないと思ったときには相手の同意なしにスパッと終わらせる

 

わたしは神の子だと自画自賛しているその人は

 

まさしく神様を気取っていた

 

 

 

 

目の前の物質に愛などはなくただ介在しているだけで

 

物質に愛が込められているかというのとはまた別な話だ

 

何故なら本来 愛というものはいきものから伝わる波動のようなもので

 

いきものが創り上げた物質などは ただ表現しているだけなのではないだろうか

 

ただわたしたちは愛とはどんなものかをはっきりと知ることができていない

 

だからこの世界にはいろんな愛が打ち立てられている

 

 

あの人にこの街を案内するとしたらどこに連れて行こうか

 

それはつまり 「わたしのどこが好き?」という問いに対しての想像に等しい

 

今まではできなかったとしても これからできるようになればいい

 

 

鳶がこの街で優雅に舞っているように

 

雲の隙間から射す陽光が山を照らすように

【詩】独りで居ることは

独りで居ることはとても気楽だ

 

だって何でも自由にできるし

 

誰かの何かに気遣いをみせる必要もない

 

自由を謳う権利はあるのだ

 

だから独りで居るのだ

 

 

 

独りで居ることはとても苦痛だ

 

だって周りには誰もいない

 

自身が他者に対して見せなければならない表情や

 

どのように接していけばよいかなど悩みに悩む

 

実は辛く苦しいのだ

 

でもそれを表に出していないだけなのだ

 

 

 

独りで居ることはとても哀しいことだ

 

だって周りに理解者と言える存在がいない

 

誰も協調してくれず 却って臆病になってしまうことや

 

自身のプライドが邪魔をして余計に独りになりたがる

 

性格が邪魔をして足を引っ張ってしまう

 

背中が寂しく見えるのはそのせいなのだ

 

 

 

 

独りで居るということは

 

独りで居ないときの大切さを身に染みて知っている

 

広い世界にぽつりと取り残されてごらんよ

 

どうにかして生きていこうと思う一方で

 

自分以外にも誰かいないかと必死で探す

 

来た道を戻ることもできず

 

ただただ彷徨い歩くだけ

 

奇跡的な展開を待ち侘びながら

 

自分は独りではなかったと叫びたい気持ちを抑えながら

 

 

 

 

独りで居るということは

独りで居たくないということなのかもしれない