つたわりとどけ。

日常と非日常のはざまから、伝え、届けたいことを個人で探求し、実践します。このたび不定期更新に切り替えました。

年末年始の読書感想文⑦ 2020年の星占い 【蟹座】 石井ゆかり:著 幻冬舎コミックス

石井ゆかりさんの「星読み」にはいつ、出逢ったのだろうか。

 

もうかれこれ長いこと、彼女の星読みを読み続けています。

 

かといって自分自身が占星術の類をする訳ではないのですが、個人的に好きな部分があり、それは「占い」の部分よりも石井さんの「語り」の部分なのだと大分後になってから気がつきました。

 

 

1年間の運勢をはじめとして、世間には色んな類の本が出ています。

その中でも石井さんの本は、独特のものなのではないかと思っています。

どんなに有名であっても、他の方の本を手に取ることはほぼないのですが、石井ゆかりさんの本だけはこれまでに何度も手に取り、そして購入しては読んできました。それだけ、彼女の文章が読みたいのだということになるのかもしれません。

 

 

人はどうしても、未来のことであっても「確かなこと」「はっきりしたこと」を伝えて欲しくてたまらないようです。それはもう一切の比喩は不要だと言わんばかりで、まさしく「白か黒か」の要求を暗にしています。答えを聞く方も必死なのかもしれませんが、少し残念だと思いました。うまくは言えないのですが。

 

占い全般は、「決まっている未来」を教えるというものではないと思います。

寧ろ、決まった未来はない、と言い切ることが出来るのではないでしょうか。

語弊があるかもしれませんが、未来だからこそ未知であり、不確定要素満載のはずなのです。それでも明日に確かなことを求めるという行為は、えらいパフォーマンスの悪い体力・気力を費やすことになると思います。

 

 

 

話を戻して。

この本は「星占い」であるため、星の動きに沿って、石井さんが独自の表現で解説をされています。その解説が個人的にはすごく好きです。好き嫌いはもちろんあるので万人におすすめ出来る訳ではないのですが、とても勉強になる方です。

 

自分がブログなどで文章を書いていくうえで、石井さんのような、誰にでもわかりやすく伝えることができる文章を書きたいなという憧れを密かに抱いています。まぁ本人が知らないだけなのですが 笑。

 

実は過去に一度、東京で石井さんとはお逢いしています。

その時の感覚や、紡がれる文章を織り交ぜて、毎日この本を開いていきたいと思います。

 

 

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個人蔵

年末年始の読書感想文⑥ 大雪物語 藤田宜永:著 講談社文庫

函館蔦屋書店を訪れた際、タイトルに魅かれて購入しました。

 

帯は北海道が誇る作家のひとりに数えられた桜木柴乃さん。

そこからわかる情報としては、どうやら短編集のようだということと、吉川英治文学賞受賞作品だということでした。

 

過去にも藤田さんの著作は読んだことがあり、その時の面白さの余韻を再び感じたくなることがあります。そんな訳でして、この作品の世界に飛び込んでみました。

 内容をかなりざっくり説明していきますと、「大雪」が引き金となり、雪のように行く先を阻んだり、雪解けという表現のように、これまで見えなかった、阻まれていたものがすうっと消えてなくなっていく・・・という人間の感情の流れなどを読みながら感じ取ることが出来る作品になっています。大雪と一言で表現していますが、豪雪という表現により近いものとして、この大雪物語は綴られていました。

 

 

さて過去にどれだけの大雪を経験したことがあっただろうか。

そう思い返したとき、1度だけとんでもない大雪の日にぶつかったことがありました。

 

それは歩道も道路も雪で埋め尽くされ、除雪車はおろか、バスさえも走っていない。

いや、除雪がまったくされていないため、車は走ることが出来ないのです。

バスの運行は終日運休になったため、自宅から地下鉄の駅までかなりの時間をかけ、そして足元が雪に埋もれながら、ザクザクと歩いていった記憶がよみがえりました。

 

 

本書に描かれる大雪という描写の大きさとして、自衛隊災害派遣があります。

それほど大規模な災害に出くわしてしまいますと、どうにかならないものかと考えながらもどうにもならない事実に対し、結構焦りを募らせるようです。

 

なるようになるさ、と言えればいいのですが、状況によってはそんな軽口も叩くことが出来ない。大雪は時間も距離も、そして相手の心のあたたかさまでも奪っていくいきもののように感じるほどです。そこに見え隠れするのは、やはり男女です。それはカップルの場合もあれば、親子の場合もあります。そこに見える感情の移り変わりをじっくりと味わい、自分の生き方に雪解け水の一滴でも活かすことが出来ればと考えてしまった作品でした。

 

 

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個人蔵

 

年末年始の読書感想文⑤ 目を合わせるということ モモコグミカンパニー(BiSH):著 シンコーミュージックエンターテインメント

アメトーーク!でBiSHのことを知り、アメトーーク!新規になったことで知った一冊。

 

こちらの本はCDアルバムなどとともに購入しました。

購入した時点で9刷となっており、少し前になりましたが増刷が決定したそうです。

それだけ重版がかかるというは、純粋に凄いことだと思います。

 

 

アイドルが書いた本は、買ったことがありませんでした。

なので、どんな内容なのか楽しみでもあり、不安でもありました。

そこはやはりアイドルなので、アイドルらしい内容にまとめられるのかなぁ、と。

そんな気持ちでページをめくりました。

 

 

読み終えて感じたことは、とても「人間味」を感じたというものでした。

「アイドル」ではなく「ひとりの人間が感じたこと」を読んでいたように思いました。

他のアイドルグループに較べると、結構ストレートに物語っているのではないかと思うほどです。それくらいの衝撃を覚えたのです。こんなにさらけ出していいのだろうか、と思ったほどです。

 

ただそれが、BiSHというグループ、モモコグミカンパニーという人の魅力を感じさせるにはうってつけの表現だったのかもしれません。うってつけというのは失礼な表現になるかもしれませんが、モモコグミカンパニーさんはここに本音を隠さず書いている!と迷わず感じたのです。それを見抜いていた、知っていた制作サイドが、一番効果的な方法をとったのではないかと考えています。

 

 

 

わたしはまだ、BiSHというグループのことをほんの数ミリしかわかっていません。

とりあえずCDなどの作品を無理のない範囲で買い求めいて、北海道でチェック可能なメディア情報を拾っては、画面越しにパフォーマンスをしている彼女たちを見ています。

 

正直、かっこいい、と思いました。

同時に、このグループを知ることが出来て本当によかったと思いました。

 

推しは違うメンバーなのですが、モモコグミカンパニーさんだってとても魅力的な女性です。この本を通すことで、彼女がどれくらい頑張っているか、本気で生きているかという呼吸が伝わってきたように思いました。

 

 

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個人蔵

年末年始の読書感想文④ 北海タイムス物語 増田俊也:著 新潮文庫

かつて北海道には北海道新聞の他に、「北海タイムス」という新聞が存在していました。

 

現在はもうその新聞社はないのですが、自分自身がその新聞を配達していたことから、この名前が記憶に残っていました。そのためこのタイトルを目にしたとき、「読みたい」と思ったのです。

 

これもお仕事小説の類になりますが、600ページを超えるボリューム。

終始「熱い」お話となっていました。

 

帯には「こんな仕事 やってられるか!」というどこか決まり文句のような文言が書かれています。この心境は会社に入りたての人であれば誰もが思っても仕方のないことであり、昭和や平成、そして令和の時代でも共通しています。しかし上記のようなことを想ったとしても、その会社がイコールブラックであるとは限りません。職務上どうしても時間の縛りが長く、不規則な職場もありますし、その反対もあります。ブラックはどこからやってくるのか?はまた、別な論議にと思います。

 

 

主人公はかつての夢を諦め、北海タイムス社に入社します。全体研修を経て配属された部署は、自分が望んでいた場所でなかったことと、会社一行きたくない部署であったため、落胆とともに少々腐ります。学生時代付き合っていた彼女にウソをついたことも裏目に出てしまい、画にかいたような人生を歩き始めます。

 

そんなどん底の毎日から、浮上のきっかけが訪れます。

ただそれは期限付きのもので、主人公は必死で仕事を覚え始めます。

この時思ったのは「どのようにすれば仕事を覚えることが出来るのか」で、そのやり方は誰もが悩み、試行錯誤しているものだからです。試験などもそうですが、勉強の仕方も同様で、漠然とやっていては何も身に付きません。それをこの作品は痛烈に教えてくれています。

 

最近年のせいなのか、小説を読んでいて泣くようになりました。

それくらい、自分の環境に当てはめているのだと思います。

 

新聞社の仕事は決して楽などではなく、日々何かを削って生きているのだと感じさせてくれた作品です。作中には業務で使用する用語で会話している?こともあり、臨場感もありました。この本は新幹線での移動中に読んでいましたが、腰を据えて読んでいただいたほうがより一層面白みを感じる作品だと思いました。

 

 

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個人蔵

年末年始の読書感想文③ 倒れるときは前のめり ふたたび 有川ひろ(旧:有川浩) 角川書店

「有川ひろ」って、誰?

そう思って手に取った一冊でしたが、かの「有川浩」さんだと時間差で気づきました。

 

有川さんのエッセイを読むのはおそらく初めてなのですが、とてもアツイ、そして重厚な一冊だったと読後に思いました。個人の勝手な印象ですが、エッセイは「軽く読める」というものだったんですが、この作品は「じっくり」読むほうの本だったのです。その背景には有川さんの作家や人としての信条等が大きく関係しているのかなと読んでいて思いました。

 

「これほどはっきり言う人も珍しいのではないか」

 

読んでいてそう感じたものです。

 

その姿勢に対してはいい悪いという評価が付きまといますが、有川さんはその評価を気にせず、ご自身の考えをきっぱりと主張しておられます。気にされているのは評価ではないことがわかりますし、社会問題をはじめとした、これから危惧されるであろう(もしくは既に問題として顕在化している)ものごとに対しても責任を以て論じておられます。それは決して無敵とか無双なのではなく、ほんとうに「責任」を負っていらっしゃるのです。その姿勢に自分の背筋が伸びる思いです。

 

本は300ページほどあり、なかなかの厚みを持っています。

構成ですが、有川さんがおすすめする本を紹介していたりなど、楽しく読めるようになっております。

その中でもテーマとして個人的に考えていきたいと思ったのは「ネット時代の言葉の力」というくくりで掲載された文章の数々。

 

これは有川さんだけではなく、他の方々も問題提起をしていらっしゃる事項になります。

言葉は自由という権利を主張し、それを行使していますが、その影響はどのようになっているか。それはもう多くの方がご存知のはずです。

 

ネットという媒体に限らず、言葉を使う以上、その責任と波及効果の所在をある程度認知しておかなくてはなりませんし、無視も放棄もしてはなりません。

 

偉そうに言えた話ではありませんが、いち表現者として修業している身としてこの本に触れることが出来て、ほんとうによかったと思います。

 

 

 

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八雲町立図書館蔵

年末年始の読書感想文② あぽわずらい(あぽやん3) 新野剛志:著 文藝春秋

あぽやんが続いていた。

 

 

これにはちょっと驚いた。

第1作を読んだのは10年以上前だったはず。

自然と手が伸びた一冊です。

 

航空業界の話になるのですが、シリーズ3作目は主人公が話を進めていくのではなく、主人公の周りにいる人物が主人公となった短編集になります。いまや定着したお仕事小説になるのですが、現代らしい企業の世知辛い世間事情も絡み、読んでいる人の共感を生む内容になっているのではないかと思います。

 

この本を知ったのはとあるラジオ。そこに招かれたゲストがおすすめの本として、この「あぽやん」を紹介されていました。その新鮮味を再び招き入れて読み進めました。

 

 

シリーズもので味わうことの出来る醍醐味は、その登場人物がどのように変化(または成長)していったかの変遷を実感できることにあります。このシリーズで主人公である遠藤は出社できないほどのダメージを負いますが、それで終わるわけではありません。

主人公がいない間でも世間は動き、仕事は回ります。誰かがいてもいなくてもいいという話以前に、仕事は進めていかなくてはなりません。主人公が退場しているそばで、いろんな立場の人がいろんなことを感じ、仕事をして生きていく様を見て、うなずきながら読んでいました。空港業界、旅行業界に限らず、どの現場でも「経費節減・売上向上」を文句にしていると思いますし、それに異議を唱える考えはありませんが、その先には何が残り、何が生まれていくかをしっかり見ていかなくてはならないんだなと感じました。

 

 

どのような環境でも、成長はできます。再び歩き出すこともできます。

それは力強い一歩なんかじゃなくてもいい。

いつもの一歩だっていいんだ。

主人公:遠藤の再出発を見て、そんなことを感じました。

 

 

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八雲町立図書館蔵

年末年始の読書感想文① 「本屋」は死なない 石橋毅史:著 新潮社

「本屋」がどんどんなくなっている。

 

それはもう地方だけの話ではなく、都市部にも蔓延してきました。

背景にはいろんな物事がありますので絞ることは難しいですが、現実問題として「本屋」の数がどんどん減っていっていることは事実です。

 

こちらの本はルポになりますが、【本を手渡す職業】の存在意義とは何か?という問いに向き合った、とても人間臭い、情熱的な一冊になります。

 

昨今、いろいろな試みを行う本屋が増えてきました。

反面、店舗内に本や文房具以外の商品を置く本屋も増えてきました。

(これはわたしが抱く本屋のイメージです)

 

大小かかわらず、本屋は常に変化を求められている。

そのように感じ取りました。

 

わたしは札幌出身ですが、大人になるにつれ、比較的小規模の路面店が次々と閉店していく様子を見てきました。代わりに増えたのは大型店舗で、ショッピングセンターといった多くの人が集まるであろう場所に店を構えるという変化が起きました。いいのか悪いのかを判断することは難しいですが、本に接する機会が変化していったように感じてなりません。

 

 

本屋が持つ魅力は、「その場所でなければこの一冊と出逢うことはなかった」という邂逅にあると思います。これはお店の規模に関係はないと考えています。それがあるからこそ、本屋は死なないのだと思います。本屋は必要なのだと思います。

 

ライフスタイルが大きく変わり、インターネットで本を買うことも多くなった今日ですが、本屋がある限りはなるべくその場所に行って本を手に取りたい。そうして満足・納得したうえでレジに本を持っていきたい。自己満足でしかないのかもしれませんが、諸店員さんが用意して下さったPOPなどを楽しみながら、本屋という至極の空間を楽しみ、また応援していきたいと感じた一冊でした。

 

 

 

 

 

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八雲町立図書館蔵