ここにはドラマがあった
毎年 鮭が産卵のために標高のあるこの場所まで来るそうだ
低い場所で行わないのかと思ったが
これがいきものの習性なのだと気づくと
何も言えなくなった
ただただ無心で
続くものを残さんとしていた
その身は襤褸雑巾のようになりながらも
士気は逆に高まる
その一瞬一瞬に
爆ぜるものを込める
徐々にその動きは衰えていくが
その威厳と気品は最後まで萎むことはなかった
そしてついには泳ぐことを断念し
川の流れに身を任せて横たわる
その姿に誰もが敬意を払っていた
見かけることは少ないが
あらゆるいきものがいのちを持っていて
そのいのちを繋げようとしている
それは線路のように
それは道路のように
それは天の川のように
それは言葉にならない想いのように
それはいのちの
それはいのちの