つたわりとどけ。

日常と非日常のはざまから、伝え、届けたいことを個人で探求し、実践します。このたび不定期更新に切り替えました。

令和5年2月の読書感想文⑥ 会社員、夢を追う はらだみずき:著 中公文庫

この作品を手に取ることが出来て良かったと感じました。

 

 

会社員、夢を追う はらだみずき:著 中公文庫 個人蔵

 

 

新入社員として紙の代理店に入社した青年の物語。

本来は出版社に入りたいという夢を抱いていたものの、それは叶わず関連性のある会社への入社だったという流れは、主人公なりの「夢」の大きさを物語っています。

 

しかし、夢の傍らにある現実は着実に動いていきます。

 

入社した会社で仕事を憶え、何もわからないまま(のことが多い状態で)仕事を行い、こなしていくうえで、疲労をはじめとした「意欲が減退する出来事」に遭遇し、「社畜」のような状態に陥っていきます。

 

その中において、希望も見えてきます。それは仕事を憶えていくことで、仕事を任されることです。それは成長の裏返しでもあります。しかしその一方で、「驕り」も生まれます。そのはざまで過ごす毎日を多くの人が経験してきたのではないかと思います。

 

 

仕事という仕組みがある以上、望む仕事があっても望まない仕事を担当することは多々あります。しかしその望まない仕事も、仕組み上では「必要な仕事」であり、存在意義のあるものです。自分が活かされるのは「望んでいた仕事」限定ではありません。むしろ、望んでいなかった仕事にこそ、自分が活きる可能性は含まれている。この作品はそう教えてくれているようでした。

 

ぼくはもう新入社員という年齢はとうに過ぎてしまいましたが、読んでいて胸が熱くなりました。ということは、年齢は重ねても、まだどこかに新入社員のときのような熱い何かが、自分の中に残っているのかなと、読んでいて思ったのでした。