つたわりとどけ。

日常と非日常のはざまから、伝え、届けたいことを個人で探求し、実践します。このたび不定期更新に切り替えました。

令和5年2月の読書感想文⑤ ぼく 谷川俊太郎:作 合田里美:絵 岩崎書店

詩人の谷川俊太郎が「自死」というテーマで言葉を紡ぎました。

 

ぼく 谷川俊太郎:作 合田里美:絵 岩崎書店 個人蔵

死をめぐる絵本シリーズ「闇は光の母 ③」

 

この絵本は「既にしんでいる」少年の語りが収められています。

 

どうして「しんだ」のか、理由ははっきりとはわかりません。

 

繰り返されるのは「ぼくは しんだ」という事実。

 

これまでの思い出を振り返るシーンもありますが、その少なさに悲しみを憶えます。

 

ひょっとするとしぬまでの理由はなかったのかもしれません。

しかし、そう考えた時点で時すでに遅かったようなのです。

 

なぜなら少年は「すでにしんでいる」からです。

 

この絵本は内容は重たさを感じさせないものの、「よくわからない深さ」を上手に表しています。しぬことで解決するかもしれないという問いに、答えは見つからなかったよと返答しているようです。

 

 

谷川さんは帯の裏に「よりよく生きる道を探る試み」と書かれています。

そのためには、死ぬとはどういうことなのかを知っておく必要があるということになります。しかし、自分が死ぬのはあくまで寿命を迎えてのことであって、途中で死んではならないことに変わりはありません。

 

最後に絵本の最後のページには、編集部による「わからないことがあったここに聞いてね」とする文章が掲げられています。こどもも大人も、この考えや感情をどうとらえればいいのだろうと悩むときはあります。その部分を理解する努力が、本書には込められていました。