つたわりとどけ。

日常と非日常のはざまから、伝え、届けたいことを個人で探求し、実践します。このたび不定期更新に切り替えました。

令和5年2月の読書感想文⑦ 無花果の森 小池真理子:著 日本経済新聞出版

小池真理子さんの作品はめったに読む機会はなかったのですが、こういう作品を読むことが出来たのはいい経験になったと思います。

 

 

無花果の森 小池真理子:著 日本経済新聞出版 個人蔵

 

帯から物々しい文言が並びます。

逃避行の果てに迎えた結末とはどんなものか。興味が湧いて読みました。

 

著名人である夫の暴力から逃れ、新天地(とはいっても寂れたところで)で生活を始める主人公。夫から受けた暴力等は読んでいて非常に辛く、そして夫が著名人であるがゆえにメディアがついて回る。その苦しさと息苦しさで沈んでしまいそうになりながらも、命からがら(に読める)夫の元から逃れ、再起を図ります。

 

再起を図ろうとした中で頼ったのは、寂れた町の有名人。

偶然にも住み込みで仕事を得ることになります。

使用人のような生活を送りながらも、次第にその人生に緊張がゆるみますが、かつて自分を追っていたメディアの記者と遭遇してしまいます。再び悪夢ははじまるのか。そこから意外な展開が待っていました。

 

 

 

読んでいて当初は、このまま先が見えないまま読み終えてしまうのかと観念していたのですが、ちゃんとした「救い」があってよかったと心底思います。奥さんや彼女という存在に暴力を振るう男性は、現代にも確実にいます。その状況を甘んじて受け入れている人もいれば、たまらず逃げる人もいます。その数が少ないことを祈りたいです。そして、そのような想いをしている人にも何らかの救いが訪れて欲しいなと思います。