つたわりとどけ。

日常と非日常のはざまから、伝え、届けたいことを個人で探求し、実践します。このたび不定期更新に切り替えました。

令和6年3月の読書感想文① 海と毒薬 遠藤周作:著 新潮文庫

巨匠の作品を読む機会は少ないのですが、これは雑誌のブックガイドで推されていた一冊。そんなに厚くない本ですが、とても重みを感じました。

 

 

海と毒薬 遠藤周作:著 新潮文庫 個人蔵

 

実際にあった事件を題材に小説を書き上げた、という点で、自分が読もうと思ったのだと思います。事実よりも小説のほうが、という言葉があったような気がしました。

 

 

時期は戦争末期で、異常な空気の中で、米軍捕虜の生体解剖を実施がされました。

これだけでも、かなり衝撃です。

また、そこに至るまでの経緯を読みましたが、それは戦争など関係なく、力関係やいびつな探求心等が生んだ展開なのではと感じました。これはまさに、今このときにも発生している「歪み」になります。

 

裏表紙に「神なき日本人の”罪の意識”の不在の不気味さ」という一文がありました。

現在でもあちこちで紛争や戦争と表現される事象は起きています。ひょっとすると、日本人以外の人種においても、このようなことが行われているかもしれないと思うと、神の存在不存在に限らず、罪の意識を無意識に否定するという傲慢ないきものなのかもと考えさせられました。