つたわりとどけ。

日常と非日常のはざまから、伝え、届けたいことを個人で探求し、実践します。このたび不定期更新に切り替えました。

令和6年2月の読書感想文⑤ R・E・S・P・E・C・T(リスペクト) ブレイディみかこ:著 筑摩書房

さしずめ、国際社会問題小説といったところでしょうか。

モデルは実際に起きた事件としているので、読んでいて迫るものを感じました。

 

R・E・S・P・E・C・T(リスペクト) ブレイディみかこ:著 筑摩書房

個人蔵

 

2014年にロンドンで実際に起きた事件をモデルとしている小説ということなのですが、どういうことかと言いますと、ジェントリフィケーション(都市において、比較的低所得者層の居住地域が再開発や文化的活動などによって活性化し、その結果、地価が高騰すること)という現象が起き、貧困層が立ち退きを迫られるのですが、移転先の家賃も高いため部屋が見つからず、路頭に迷う人たちが続出するというものでした。

 

この状態はおかしい!と声を上げて役所に赴くものの、紹介されたアパートも高い家賃であったりと解決になっていない状態であったのと、「空き物件」はあるのに入居者を募集していない地域があったりなど、政策自体があべこべであったことから、シングルマザーたちは半ば放置されている一帯を占拠して生活を始めます。

 

その環境を取り巻く人たちにはいろんな人がいます。この作品での主人公は現地に住む日本人記者とその友人(日本からはるばるやってきた)ですが、この光景を見て様々なことを考えます。これが日本でもあって欲しいのですが、日本でもときには同様のことが行われます。自国の外の出来事には敏感ですが、内の出来事には鈍感というのは、日本人だからなのかどうかはわかりませんが、こういった社会問題に対する取り組み方の姿勢は世界共通なんだなと違う意味で感心してしまいました。

 

社会問題とは、「困った」を解決することになります。かなりおおざっぱですが、その連続が住みよい社会を作り出していくことにつながります。そのプロセスがどこかで書き換えられたとき、わたしたちの生活は危うくなります。何かを監視する、何かをキャッチするという意識を感性を持つことがいま、求められているのではと思います。