書店でなぜか「宇宙」という言葉を目にするタイミングが重なり、購入してみました。
今回読んだ本は
宇宙船の落ちた町 根本聡一郎:著 ハルキ文庫(個人蔵)
です。
とある田舎町、宇多莉(うたり)町にある山に墜落した宇宙船。
宇宙船が落ちた町は規制線が張られる一方で、宇宙船に乗っていた宇宙人は時間をかけて社会に溶け込み、普通の生活を送るよぅになっていました。
故郷を離れて大都市に住む主人公は、決して順調ではない生活を送っていたのですが、ある人気アイドルの握手会をきっかけに物事は人間一人では抱えきれないほど大きくなっていきます。
読後に感じたことは、「故郷に帰りたい」という想いの強さが人種にかかわらず共通していることでした。
このアイドル、実は宇宙人だったのですが、アイドルである以上その素性は隠さざるを得ませんでした。もちろん自由な行動もできないので、芸能活動を休止して「別な」活動を開始します。
主軸の周りに設定されたことは現代にもある光景であり、事実に感じました。
変わり果てた故郷に懐かしい光景を探すさまや、体裁だけが整えられていく日常。
その中で芽を出す権利や、膨らんでいく権威のようなものは、どのような環境に置かれていても逞しく生きていくことの表れであると思います。
この本には地球人と宇宙人が登場していますが、これまで数多の作品の中で、
「手を取り合う」
ということがテーマであったものは少なくないと思います。
今回の作品も、そんな印象を持ちましたし、それを結実させたひとつの結果を描いています。
近い未来なのかはわかりませんが、このようなことが現実に起きたとき、何らかの参考になるかもしれないなと思いました。