つたわりとどけ。

日常と非日常のはざまから、伝え、届けたいことを個人で探求し、実践します。このたび不定期更新に切り替えました。

令和3年1月の読書感想文⑦ 地元がヤバい・・・と思ったら読む凡人のための地域再生入門 木下斉:著 ダイヤモンド社

土日とまとまった時間を創ることが出来ましたので、集中して読み進めました。

 

 

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地元がヤバい・・・と思ったら読む凡人のための地域再生入門 

木下斉:著 ダイヤモンド社 八雲町立図書館蔵

 

 

不思議と手に入らなかった本で、今のタイミングで読んでよかった

 

刊行は2018年で、当時からチェックはしていたのですが、買おうと思ってチェックしますと不思議と売り切れていました。結局砂川市のいわた書店で本書を見つけ、念願の購入を果たしました。

 

木下さん、実は何度か北海道八雲町に来ていただいており、2度ほど講演を聴いております(そのうちひとつはオンラインで)。他の著書も読んでいましたが、ぼく自身がボランティアを経験していたり、地域おこし協力隊に興味を持ち始めていたことから(当時の話です)、木下さんの存在を知るようになりました。

 

結局2021年になってやっと本書を読み終えましたが、素直な感想としては、地域おこし協力隊を経験し、就職した後だからこそ感じるものもあり、自分がこの中に描かれている渦中の人と同等の立場にいたとしたら、冷静にはなれないだろうなというものでした。

 

 

ページを開いて驚いたことは、「小説」になっていたことです。

ただ、注釈はついています(100以上)。

その注釈も、木下さんが経験されたことを書いているように思いました。

この本は、ひとつの結晶体です。

 

 

 

悪いのは行政か?それとも地域住民か?

 

話の流れとしては、都市部に就職して日々生活している主人公が実家のお店を畳むところから始まります。そこで同級生が次々と登場し、地域再生の門を叩くことになります。

 

話の流れとしてはよく構成されていて、着実に実績を積んでいくいっぽうで、焦りから生まれる大失敗までが描かれています。そして勢いのある人たちに群がる存在にも触れ、地域再生は一筋縄ではいかないことを何度も思い知らされます。

 

この中で挙げられていることとして、「こちらのやりかたを理解してくれないこと」があります。そして地方特有に見えてしまいますが、その活動をよく思わない「勝手な想像による嫌悪感」が見え隠れします。そこに時間を取られてしまい、計画がとん挫することも少なくないと思います。

 

 

あくまで僕の経験談ですが、おそらく、地域おこし協力隊である自分(当時)と、役場との関係はあまり良い関係ではなかったのではと回想しています。理由は「それぞれの言っていることが理解できなかった」からです。僕のほうは熱意を伝えますが、役場側は事務的な対応です。実際に手掛けた事業がありましたが、しばらくの間は平行線でした。当時は理解を示してくれないことに苛立ちを覚えましたが、後に「話している言語が違う」と思うようにし、熱意はそのままに、姿勢を変えていくようにしたのです。

 

地域おこし協力隊とは言っても、大きくくくれば公務員(臨時職)です。

一部の地域住民にとっては、「また(俺たちの)税金を(勝手に)使いやがって」という思いがあるように感じました。自分たちのために使わず他のことに使い、大した成果もないまま終わっていくことに対しての、その住民なりの意思表示なのだと思います。

 

実際にあった話ですが、当時住んでいた町内会の催事があり、その日は出勤だったので短時間だけお邪魔しました。が、切り上げてその場を失礼しようとすると、「この場にいることも仕事だろうが!」といきなり声があがりました。その声に対し、「店(当時は協力隊で運営しているお店がありました)に戻らなくてはならないので申し訳ありません」と返答したのですが、もう完全無視です。その場を辞する挨拶をしても、こちらを見ようともしませんでした。そういう人たちは、地方であれ、都会であれ、一定数存在します。

 

じゃあその人たちは悪者か?と問われると、必ずしもそうではない気がします。

話せばわかる、というのは夢物語かもしれません。一生理解してくれないかもしれません。その住民のためだけに時間を割く必要もないと考えています。やはり結果を示して姿勢を伝えていかないことには、岩のような態度を穿つことは出来ないのではと考えています。そういった背景が個人としてあったので、その当時にこの本を読まなくてよかった、と素直に思いました。

 

 

 

誰もがお金をどう使っていくかに関心があるから

 

本書のポイントとして、補助金の話が出てきます。

〇〇の事業について国(または地方自治体)から「予算」がついたから、これを使って何かマチの活性化につながることを依頼したい。

 

おおよそこのような話が出てきます。

これはもう、どの自治体にもある話だと思います。

 

この依頼を受け、企画を練って実行しようとすると、高確率で「違う、そうじゃない」という横やりが入るようです。

 

どうやら予算の執行(使うことを指します)には、「こうしなければならない」手順のようなものがあり、それが民間感覚に沿わないものとして描かれています。

結果、補助金を使った事業で何かをさせてもらえるということにはならず、お目付け役の人たちの言われるがままになり、無駄に予算と時間を費やす「だけ」となった。

 

印象的だったのは、「報告だけあげればよい」といった描写です。

つまり、中身ではなく、「このように予算を使いました」という報告だけがあればよい、というように聞こえるのです。

 

これがずっと前から続いていたとしたら、変わるのは大変なことかもしれません。

 

 

住民の方も、そういった流れを知っているからこその反発であったかもわかりません。

わかりませんが (笑)

 

 

 

止まったら終わり。だからこそ。

 

地域再生は、地方の自立につながります。

しかし多くの自治体が国などからの支援を受けている限りは、そう本気にならないかもしれません。

しかし実際に起きていることとして、人口は減り、高齢化が進んでいます。

衰退していく産業があり、仕事の口も少ない状況が続きます。

 

これをどうにかしようじゃないか、というのが地域再生となります。

現在北海道八雲町でも、NPO法人から地域おこし協力隊、そして新たな団体がこの課題に取り組んでいます。さまざな視点から、地域再生のコツのようなものをつかんで欲しいな、と願っています。この作品は、目頭を熱くしながら読みました。

 

 

地域おこし協力隊だった自分になぞらえた

 

もう過去のことなので詳細は省きますが、自分が地域おこし協力隊であった1年間を本書にあてはめて読んでいました。自分の活動実績もありますが、残念ながら収益を生むものではなかったので、その点を後悔しています。また、行政との話の進め方をよく知っておけばと思いました。通じないことに対して憤慨しているよりは、どうすべきかを考える、または教えてもらうことが手っ取り早いのです。結局就職先を得て退任しましたが、やり残した部分もあり、1年では短かった、という感想を持ちました。

 

自分の今後は所属を変えてになりますが、個人として、時には団体として、何が出来るかを考え、そして蓄積していく必要を感じています。

 

 

長々と書いてしまった、いろんなことを感じた本でした。