つたわりとどけ。

日常と非日常のはざまから、伝え、届けたいことを個人で探求し、実践します。このたび不定期更新に切り替えました。

令和3年12月の読書感想文⑧ 楽園のカンヴァス 原田マハ:著 新潮文庫

いわた書店さんの「一万円選書」にて選んでいただきました。

原田さんの著作は読んでいますが、絵画絡みのお話ではダントツ!に面白かったです。

 

 

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楽園のカンヴァス 原田マハ:著 新潮文庫 個人蔵

第25回山本周五郎賞 

ダ・ヴィンチ プラチナ本OF THE YEAR 2012

王様のブランチ BOOKアワード2012大賞

北海道砂川市 いわた書店による一万円選書による選書

 

美術系のミステリーでも、これはかなり違いました。

1枚の絵に関する鑑定を、いわくつきの業界人(腕を見込んでのこと)に依頼する。

日常では見ることのない出来事が、作中では描かれています。

しかしその絵もいわくつきで、「本物」と鑑定されれば良いのか、それとも「贋作」と鑑定されればよいのか。人間の思惑次第で、鑑定結果が変わりそうな雰囲気も醸し出します。

 

単純な疑問として、その絵の正当な価値を定めるのが鑑定、だと思っているのですが、どうやら「歴史的〇〇を変えたくない」と考える立場の人もいることが明らかになっており、こういった話が実在したとしたら、部外者としてはやるせない気持ちになります。

 

物語は絵画の鑑定だけにとどまらず、鑑定を依頼された二人の専門家にも注目が注がれます。二人のエピソードも大変興味深く、ドラマを感じました。

 

実は原田マハさんの美術系のお話は、どことなく敬遠してきました。

やはり理解が追い付かないことがあったからで、なるべく違うお話を読んでいたのです。しかし今回選書してもらい、読んでみたところ、ちゃぶ台返しのごとくこれまでの価値観が吹っ飛びました。もう一度、そのほかの作品を読んでみたい気分になりました。

 

本書を読み終えて初めて原田さんの経歴を目にしたのですが、なるほど、そりゃそうだわ、と思わせる内容でした。だからこそ、期待したいという気持ちが溢れます。不遜な表現になってしまいますが、自分の中に隠れた新たなモノが、この作品によって見出されたような気がしてなりません。