つたわりとどけ。

日常と非日常のはざまから、伝え、届けたいことを個人で探求し、実践します。このたび不定期更新に切り替えました。

令和3年12月の読書感想文⑨ きのうのオレンジ 藤岡陽子:著 集英社

いわた書店さんで選書された単行本になります。

文庫本が多くありましたが、分厚い単行本がこれでした。

 

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きのうのオレンジ 藤岡陽子:著 集英社 個人蔵

北海道砂川市 いわた書店の一万円選書にて選書

 

切ないお話です。

主人公が若くしてがんに罹ります。

前段階の検査から入院・治療そして終焉までを綴ったお話で、読んでいて胸が締め付けられる感覚を覚えます。

 

主人公は職場でも頼りにされており、よく聞く「こんないい人が」という設定。

そんな人ですら、病気にはかんたんに(ときに)罹ってしまうのですから、無常です。

 

その病気をきっかけに、かつての同級生や兄弟、そして親とのつながりが生まれ、新しい交流のようなものが生まれます。この時点ではがんの治療法を必死に模索し、挑戦していく姿が見られます。文字だけではありますが、その光景がはっきりと浮かび上がるほどです。

 

しかし若さがたたってか、病気は進行します。そして、力尽きてしまいます。

そこまでの過程で、主人公は周りの人たちの何かを変えていきます。決して彼が何かをしたというわけではないのですが、彼が影響の根源となって、整えていく印象です。良し悪しという印象は残りますが、その決断は人を揺るがぬものにし、後悔を払しょくしていくかのようでした。

 

読み終えて感じたことは、ここまで関わることができたとしたら、自分は後悔しないであろうか、ということでした。

 

現在、身近な人では自分の父親、そして母方の祖父母を亡くしています。そのほかは叔父といった具合で、やはり父親、そして祖父母のときが堪えています。別れらしい別れはできなかったように思いますが、今回の物語のように、時間を与えてくれたとしたらと思うと・・・と考えてしまうのです。

 

 

決して、ハッピーエンドではありません。ですが、どうしてか、心が晴れていく感動を残してくれた、大きな一冊となりました。

 

 

 

 

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