つたわりとどけ。

日常と非日常のはざまから、伝え、届けたいことを個人で探求し、実践します。このたび不定期更新に切り替えました。

令和3年12月の読書感想文⑭ ブレイクニュース 薬丸岳:著 集英社

読みたかった本が幸いにも図書館にありました。

 

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ブレイクニュース 薬丸岳:著 集英社 八雲町立図書館蔵

 

ブレイクニュースとは、SNSで公開されているニュース番組になるのですが、完全個人運営の媒体で、週刊誌やワイドショー等とは一線を画す、切込みの鋭い番組になっています。取材も徹底されており、かなり現実味を帯びる内容になっていました。

 

本作は長編ではなく、ブレイクニュースで流れる数々の題材(ニュースの内容)ごとに話がまとめられております。そのどれもがスカッとするものではなく、考えさせられ、そして時には根拠のない恐怖を覚えます。でも不思議なことに、興味が湧いてしまいます。

 

 

これは新たな社会派小説であり、現代の潮流に対する挑戦のようにも思えます。

SNSで流れる情報がすべてではないことを知っていたとしても、わたしたちは自分にとって都合の良い情報、自分が「信じたい・支持したい」情報のみを取り上げ、拡散し、その拳を振り下ろします。その先に何が起こるかも知らずに、です。

 

本作はその先をも描く場面があり、内心どきりとさせられます。

自分は悪くないと思っている人が、この世界には溢れるほどいるでしょうが、そのような人ほど、矢面に立たされるのだろうなという危惧を覚えました。

 

 

この媒体の良いところは、大手メディアにありがちな制限を受けないことにあります。

この媒体の悪いところは、発信するツールがSNSだけだということにあります。

この世界は真実を追い求めるあまり、混乱が加速しているように思えます。

〇〇のためと思ってやったことが、大きなことの引き金を引く。

そういうこともあるのだと、肝に銘じておきたいです。