つたわりとどけ。

日常と非日常のはざまから、伝え、届けたいことを個人で探求し、実践します。このたび不定期更新に切り替えました。

令和4年6月の読書感想文⑧ 運転、見合わせ中 畑野智美:著 実業之日本社文庫

電車が止まったというひとつの現実が発生したことによるドラマを描いた作品になります。

 

運転、見合わせ中 畑野智美:著 実業之日本社文庫 個人蔵

 

 

通勤や通学などで使用している電車がある日突然運航停止になったことでイレギュラーな対応に追われる中、現実として動きは止められているのに別な側面では違う事態が動き出すということを巧みに表現しています。これは「電車が止まった」という条件で「〇〇が動く」というからくりに感じました。

 

本は短篇集ですが、共通のものとして「電車が止まった」が中心にあります。

その事実を起点とした人間ドラマは、中々考えてしまうものがあります。

そして作中には、電車が止まった原因となった登場人物の話もあります。これはとても興味深いです。こういった「奥深く」が読めるのは語弊がありますが、いいことなのではと感じました。また、本作は「背中を押す小説」だと思います。電車が止まるというのは思いがけない出来事の究極のひとつと思いますが、意図しない出来事であるからこそ、その展開も予想や意図を超えるものなのではないでしょうか。

 

わたしたちは振り回しているようで実は振り回されている。

それくらいに考えておいたほうがいいのかもしれませんね。