つたわりとどけ。

日常と非日常のはざまから、伝え、届けたいことを個人で探求し、実践します。このたび不定期更新に切り替えました。

令和5年5月の読書感想文⑩ 東京ブラックアウト 若杉冽:著 講談社

電気事情は震災以降、ずっとシビアな問題だったのではないでしょうか。

ウクライナ侵攻関連でエネルギー事情はまた違う意味での貧困をもたらしています。

 

東京ブラックアウト 若杉冽:著 講談社 個人蔵

 

著者は現役キャリア官僚とのことで、告発本にも感じます。

関連書籍には「原発ホワイトアウト」もあり、不都合な真実が見え隠れする世界のようです。

 

話はおそらく、実際の新聞報道等の事実を組み込みながら、著者が知りえている(と個人では捉えている)情報を織り込んだ作品で、中々の衝撃度です。

この本を読んで思うのは、「何かを行うには何かを犠牲にしなければならない」という原理で、こと大きな事業に関してはその犠牲度と言いますか、犠牲の対象が不特定多数になるなど大規模化している印象があります。これはもう、開発や開拓などの行為が発生する場合は必ず「何かを失う」ことが確定しています。エネルギーインフラはもはやなくてはならないものですが、それと引き換えに大事なものを失ったのは、大きな痛手になっています。しかし開発・開拓当初はそこまでのことを考えていませんでしたし、現代においても考えることには限界があるでしょう。望むべくは、何も起きないまま時を過ごすことが出来れば一番良いです。が、世間や経済は黙っていてくれません。批判の矛先は国や事業者になってしまいますが、わたしたちはもっと仕組みを知っていくべきではないでしょうか。

 

今も昔も、わたしたちは母国のありようを嘆いたり批判したりしています。

しかし結局は、そこどまりです。そして、情報の取り扱いが凄く下手です。もしかすると、扱いに長けていると自覚している人でも、誤った情報を信じ込んでいる可能性は十分にあり得ます。情報が発信されれば、その拡散を止めることはほぼ無理と感じています。数多の情報の中に虚偽の情報と真実の情報があったとして、わたしたちはそれを見分けることが出来るでしょうか。これからの時代は、徹底的に情報を精査する力が必要なのではないかと痛感させられた本でした。