令和2年(2020年)2月の読書感想文③ 土に贖う 河﨑秋子:著 集英社
図書館ではいつも最低5冊以上の本を借りてきます。
入口入ってカウンターそばの棚には新刊本が並べられているのですが、何気に取って借りた本の中に同じ著者の本がありました。
その著者は「河﨑秋子」さん。
著書はいずれも北海道に通じた作品ということで、順次紹介していこうと思います。
1冊目は
土に贖(あがな)う 集英社 八雲図書館蔵
です。
こちらは短編集となっており、すべて北海道が舞台です。
開拓のころを切り取った、事実のような話が収録されており、その場所は多くの人が知っているであろう所を舞台としています。
いずれの話も、北海道にかつてあった「産業」に焦点を当てています。
また、その産業に従事する人たちにもスポットライトを当てています。
ただ、決してその暮らしは裕福ではない。現代でいうところの「ブラック」ではあります。
そんな環境でも、生きていかなくては仕方ない。
そうするほかないんだ。
そんな心の叫びが、それぞれの作品から聞こえてくるようでした。
よく聞かされた、または見聞きした話では、北海道の開拓のために、政府の大号令で本州各地域から開拓のため移住してくれる人を大々的に募集していたというものがあります。ぼくの場合、父は富山県からの移住者でした(戸籍を見ると岐阜県の白川郷近くの富山側)。おそらくですが、この話の中に出てくる人たちにもそのような境遇の人がいるように思います。
いつの時代も、人を使う側と使われる側が存在します。
アクセントするうえで、人を使う側の性格がいびつに描かれがちなのですが、この時代は理不尽なことがアタリマエであったために、そんな姿を描いても癖が強いと感じないのはなんだかな、と思いました。
可能性を夢見た短編を、ぜひ読んでみてください。