令和5年7月の読書感想文① 人工知能で10億ゲットする完全犯罪マニュアル 竹田人造:著 ハヤカワ文庫
ここ最近の現代において、実際に起きそうな危険性を孕んだ内容でした。
人工知能で10億ゲットする完全犯罪マニュアル 竹田人造:著 ハヤカワ文庫
個人蔵
※第8回ハヤカワSFコンテスト優秀賞受賞作
物語の舞台は、データ保安がかなり大掛かりになってきている世界。
凶悪犯罪はその恩恵を受けて激減しているものの、理不尽な環境の撲滅までには至っていない世界で、人工知能の「心」を読み、認識を欺く技術を有した人工知能技術者はその才能を採用され、現金輸送車強奪の犯罪に駆り出されていきます。
内容はスリリング、そして理系な香りがただよい、どことなく「下剋上」な旗を振りかざす姿をイメージします。巻末には参考文献もあることから、ある程度の現実的な考察を経て、このような作品に仕上げられたのではないかと、SFが少々苦手な読者は感じました。
現在、AIという技術の応用が広がりつつある中で、自主規制のような歯止めもかかりつつあります。それはあくまでも法律で規制されない範疇のものと理解していますが、今後はどんどん混乱するものと思えます。理由はかんたんで、AIを使ったあらゆるものごとが使用者に「多大なる利益」をもたらすものであったならば、結局は躊躇なく使うからです(思う、ではなく)。その背景には、SNS等で一攫千金や一躍有名になった人たちがいて、それに憧れる人たちが続出していることを観れば、想像がつくのではないかと思います。
こういった行為には、どこかでアナログな行動がついて回ります。
それを他人に委託して実行するとしたら。
そう。すでにある犯罪モデルの誕生になります。
世間はどんどん便利になっていきますが、現実世界はどうやら犯罪の激減という部分にはなかなか結び付かないようです。
あまり考えたくはないですが、そのような未来が来ることを想定し、自衛手段を確立しておく必要があるのかもしれません。善意はもう世界の端に追いやられてしまっています。
そんな悲しいことを考えなくてはいけない、世の中になってしまったのです。