つたわりとどけ。

日常と非日常のはざまから、伝え、届けたいことを個人で探求し、実践します。このたび不定期更新に切り替えました。

令和5年7月の読書感想文② しろいろの街の、その骨の体温の 村田紗耶香:著 朝日文庫

第26回三島由紀夫賞受賞作品となります。

 

しろいろの街の、その骨の体温の 村田紗耶香:著 朝日文庫 個人蔵

 

 

クラスでは目立たない女生徒が通っている習字(書道ではないのか)教室において、一緒に習っている男子と仲良くなります。

 

次第に彼をおもちゃにしたいという気持ちが芽生えるのですが、その「おもちゃにしたい」が「性への目覚め」と絡まり、複雑なお年頃の内面を実に丁寧に、そして残酷に書き出しています。ちょうどそのころの学生というのは、平気で相手を傷つける傾向にあります。主人公の女性とも美しい・かわいいというわけではないようで、そこに深く傷を負ったりします。そういったことを経験しながらも、性的なことへの目覚めに対する躊躇や、そこに即している日常を歩んでいきます。正直、自分が学生のときだったなら、読むのをやめていたかもしれないと思うほど、苦しさを感じる作品であります。

 

人間の心的な部分における成長過程を描くのは、中々骨が折れることだと思います。

異性とのあいだに生まれた「性的な目覚め」は、決して悪いことではなく、通るべき道だと思います。しかし生活環境がそれをどのような方向にもっていってしまうかで、その人の心は大きく左右されていくのです。