医師であり小説家でもある海堂尊さんによる、北里柴三郎と森鴎外の物語になります。
北里柴三郎は今度の新札に肖像画が入ることで再び脚光を浴びることになりました。
森鴎外は医療分野よりも、作家として触れることがほとんどであったように思います。
本書は北里の物語、森の物語、ときにふたりが交錯する物語となっており、同じ時代に二人がいたことにまず驚きを隠せません。そして、ふたりとも同じ目的を追っていたことに、更に驚きました。
当時の感染症は原因不明の未知の症状であり、原因究明が急務になっていました。北里も森も、ともに海外で学び、研究に励むことになります。しかしながらふたりはそれぞれ別のアプローチで、その原因を突き止めようとします。その背景には、学んできた履歴と、当時の政治事情があったように感じました。
このふたりのどちらが幸せで、このふたりのどちらが勝ったのか?
これは一概には語れないような気がします。
しかしこの時代の人にあって現代の人に足りないと思うのは、命を懸けていくことだと思います。現在はいろんな取り決めでそのようなことは慎まれる風潮ですが、熱量を維持することはできるように思います。このときのような情熱、このときのような姿勢はまさしく「神がかり」であり、近代の日本を開く一助になったことは言うまでもありません。現代の日本においても、そのような人、そのような実績が現れ、より盤石な国土にしてもらえたらなと感じました。
分厚い本ですが、一読の価値があると思います。
小説化としての森鴎外の作品も、また手に取ってみようと思います。