つたわりとどけ。

日常と非日常のはざまから、伝え、届けたいことを個人で探求し、実践します。このたび不定期更新に切り替えました。

令和5年繫忙期の読書感想文㉕ マザーツリー スザンヌ・シマード:著 三木直子:訳 ダイヤモンド社

森は、いま既にあった世界を表していたと知る本でした。

 

マザーツリー スザンヌ・シマード:著 三木直子:訳 ダイヤモンド社 個人蔵

 

久々に自然関連の本を築地書館以外の出版社から購入していますが、海外の樹に関する書籍を読むと、ほんとうにいろんなことを教えてくれていることがわかります。

 

著者は森林の生態学者で、ここではかなり「コア」な研究をしてきたことが綴られています。しかし世の常で、「個人」と「組織」での、自然に対して必要なことの考えには「ずれ」が生じ、時には大小さまざまな摩擦を生みます。これは日本においても同様だと思うのですが、自然に関する研究は、どうしても「公立」機関で進められる「べき」と捉えられており、中々「民間」には浸透していかないのが現実です。そうこうしているうちに、「表面だけの維持」にのみ固執してしまい、森を再生するとか、生態系を守るといった目的からは離れがちになってしまいます。

 

本書は様々な制約がありながらも、公益となる「研究結果」を追い求めたひとりの自伝のようなものだと感じています。世界的にもこういった人たちの立場が尊重されれば、いわゆる天災のようなものに立ち向かえる知恵が湧いてくると思うのです。

 

人ひとりで追える時間は、わずかだと思います。反面、森や樹は人間よりも長い期間、そこに在り続けます。願わくばその研究であったりプロジェクトが、何代にも引き継がれて、歴史を動かすようなプロジェクトとして認知されてくれればと願います。

 

世界はどうしても、経済や開発に目を向けた動きだけが活発になってしまいます。

自然に目を向けた動きも活発にしてこそ、重要なのではと感じました。