つたわりとどけ。

日常と非日常のはざまから、伝え、届けたいことを個人で探求し、実践します。このたび不定期更新に切り替えました。

令和2年(2020年)2月の読書感想文④ 肉弾 河﨑秋子:著 角川書店 

図書館で借りた、河﨑秋子さんの2冊目はコチラです。

 

 

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肉弾 河﨑秋子 角川書店 八雲町立図書館蔵

 

 ひとことで言えば「サバイバル小説」になります。

映画化されてもいいと思う作品です。

いろんな意図はあるでしょうが、ラジオかテレビのニュースで流れた熊の目撃件数の増加について触れてみますと、昨年度は3,000件程度だったものが、現時点で既に5,000件を超えているというものでした。

 

これは本州のツキノワグマ、北海道のヒグマ両方を合わせた数とのことで、明らかに個体数が増加していることと、人里に降りてくるケースが増えていることを示しています。

 

昨年は札幌市南区の住宅街で悠々と歩くヒグマの姿が連日報道されました。

そのままにしておくことに関しても、駆除したことに関しても、どちらにも賛成と反対の声が届けられたとのことでした。

 

それほど、あまり望まないかたちで身近になってしまった熊ですが、本作はそういった動物を狩る「ハンター」を父に持つ親子が主人公になります。

 

父は子に狩りを教えます。その中でも自分が狩りたいと思うモノに対しての執着心を垣間見せ、制限区域外まで熊を探しに行き、熊を撃つ瞬間を今かと待ち受けます。

 

しかし熊のほうが相手を察知し、視認することが早く、父親は殺されてしまいます。

息子も傷を負いますが、かろうじて生き延びます。だがしかし、どうやって生き延びるかが大問題で、周りは大自然。人など来るはずがないという場所です。その中において、自然界に生きる獣を相手にどうやって生きていくか。息をのむ展開で読みごたえがありました。

 

 

作中の描写も難しくはなく、容易にその光景がイメージできたことも、読後の爽快感を裏付けるものになりました。別な作品も読んでみたいと素直に感じました。