【詩】見えているのに
いつもの道を車で走る
その曲がり角の向こうにあなたがいることをわかっているのに
その場所を通ることはしない
だって
あなたの顔を見たとしてどうすればいいのだろう
結果は見えているのに
あなたの微笑は
あなたの話し声は
そしてその距離は
親近感とは程遠い
ぼくにはあなたが見えているのに
あれほど晴れていた空が
いつの間にか厚い雲に占領される
風が寒さを運んできては
地面を湿らす呪文をかける
この場所からは遠くが見える
世界の移り変わりは見えているのに
いざ自分の元に訪れると
ひどくひどく狼狽する
そんな姿も
どこかで見えているのだろうか
見えていることが
見えているように