つたわりとどけ。

日常と非日常のはざまから、伝え、届けたいことを個人で探求し、実践します。このたび不定期更新に切り替えました。

令和4年3月の読書感想文⑨ 夜が明ける 西加奈子:著 新潮社

随分前に購入していたのですが、やっと読むことが出来ました。

漠然としてしまうのですが、読んでよかったなと思っています。

 

 

 

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夜が明ける 西加奈子:著 新潮社 個人蔵

 

再生と救済の物語とありますが、中身は苦労の連続、といった具合で重みを感じさせます。その重みはなかなか言語化、具現化はできないけれど、みんな生きているうちのどこかでぼんやり感じ、もやっとする経験をしてきているのではと思います。これだけ文明が進んでいても、自分の内にある様々なものごとを顕すことは依然として難しく、それが背景にあってこの世界はどこか混沌としています。そんな空気の流れを見えるように綴っている本作は、ずしりとくるものとは少し異なった重みを体験させてくれました。

 

ただ、読み方によっては「あまりはっきりしない」展開だと思われてしまう一面を抱えているように思います。社会小説(と思っている)であるからこそ、じっくりと読ませて理解させ、感じさせるフローが必要であり、わかりやすい展開は不要なのだと感じます。

 

個人の感覚で申し訳ないですが、裕福ではない環境で育ってきたひとりとして、この本を読むことが出来てよかったなと素直に思います。本作はふたりの男性が主人公となります。その成長と友情を自分の人生にも照らし合わせ、夜明けを求めていきたいなと思いました。