帯には物騒なセリフが書かれていました。
「いっそ、二人で殺そうか。あんたの旦那」
犯罪サスペンス小説という位置づけなのですが、読後に感じたのは「旦那を殺した」側が「救い」を求める話であったように思います。
殺されてしまうのは、妻に日ごろからDV(家庭内暴力)を振るっていた旦那。
その状況に耐えられそうもない妻と、友人のOLがとてつもないことを考え出す。
そこまでの同線はそんな空気も微塵にも感じさせず、お仕事小説の世界を作り出していました。そのためか、途中不思議な読みにくさを感じたほどです。
しかしこれが導線となり、念願を果たすための行動に移します。
念願は実現しますが、実際はそうはいきません。それは現実世界も同様です。
知らず知らず、物事が明るみに出ていきます。それは旦那を殺した妻がいままで受けてきた仕打ちを無視するかのような、残酷な行為になります。その状況に同情しつつも、人を殺したことに対しては同情はできず、人殺しのまなざしを向けてくるあたりは、やはりそうだよなぁと感じました。
おそらく「そこまでしなくてもいいのに」とか「ほかに方法もあっただろうに」という判断が下されると思います。
しかし実際は、そう「悠長」なものではありません。精神的に追い詰められるとはそういうことなのです。そこにある冷静な判断は最早「意味のないもの」に成り下がっているのです。
最終的に犯行は警察の知るところになります。二人は逃亡を決意します。
ラストは読み手が感じた「こうあって欲しい」がそのまま描かれていました。
読後に感じたことは、救われたのは自分じゃないか、ということでした。
読み応えある作品です。機会があれば是非どうぞ。