つたわりとどけ。

日常と非日常のはざまから、伝え、届けたいことを個人で探求し、実践します。このたび不定期更新に切り替えました。

令和5年4月の読書感想文⑩ デフ・ヴォイス 丸山正樹:著 文春文庫

ラボラトリーハコさんの中で設けられていた、「かの書房」さんの棚で見つけた一冊。

 

デフ・ヴォイス 丸山正樹:著 文春文庫 個人蔵

 

副題に「法廷の手話通訳士」とあります。

 

もう何がなんだかわからなかったので、裏表紙を読んで、これまで読んだことのない作品でしたので買い求めました。

 

 

こちらの作品は

・手話での会話がある(耳が不自由な人が登場する)

・殺人事件が起きる

という組み合わせで、正直展開が読めませんでした。

 

耳が不自由な人が題材となった作品は他に幾つかあるのですが、何かしらハンデを抱える人に対しての、世間の目はこんなにも冷たいのかという愕然とした事実のようなものを見せつけられます。それは当事者としては、何とも言い尽くせないものではないかと思います。決して多くはない(と思われている)事象に対して、多くの人は「自分は関係ない」と思いがちです。だからこそ、「さっさと」というおざなりな、そして冷たい対応に帰結してしまうのではないかと思います。

 

この作品を読んでいろいろと勉強になったことがあります。

あまり意識していなかったことですが、生まれつき耳が不自由な人もいれば、後から耳が不自由になった人もいる、ということです。それだけでも大きな違いがあるということ。また、手話も「ひとつの言語」を使っているわけではないことに、ただただ驚いてしまいました。本作品はそのような「すれ違いが起きるかもしれない」材料を駆使し、物語を複雑化しては社会事象としての課題を浮き彫りにしています。

 

世間では、こういった「ハンデ」を持つ人を冷遇する構造が残っています。

それがニュースとして取り上げられた時期もありましたが、その「炎上」具合は果たして「健常者」にどれくらい届いたのでしょうか?そこに温度差があるとするならば、そこには無知が存在します。自分だけの都合の良いことだけを知るのではなく、「いつか触れるかもしれない話題」として、こういったことも自分のことのように知っておくべきではないかと感じました。