読んでいてとても不思議に感じました。
お腹が空くという感覚と、この犯人の心情をよく知りたいというのと。
モデルになった事件を知っていますが、こうして話を読んでみると、そう簡単に糾弾することはできないのではという感覚を持ちました。
BUTTER 柚木麻子:著 新潮文庫 個人蔵
週刊誌の女性記者は男性の資産を奪ったうえで殺害した罪に問われ、収容されている女性のもとへ取材交渉に向かいます。
そこでなぜか、料理(食事)の話になるのですが、ここの描写がとてもリアルで、読んでいてそこに書かれているものを食べたくなります。これは何だろう?と思うのですが、言えることは「その味をちゃんとわかっている」人の言葉であるから、説得力があるのではないかと感じました。
この小説は社会小説だと思うのですが、斜めから見れば「自己啓発」ともとれる作品だと思います。それくらいのことばの強さがあり、だからこそ命を奪われた男性たちはその女性の虜になったんだと思います。当初は相容れない二人の会話でしたが、その先の会話を求める行動を起こすことで、相容れないはずの二人に何かしら通じるものが生まれます。現実社会では他社を拒絶し糾弾するばかりの模様が繰り広げられていますが、相手を知るためには、まずは歩み寄る必要があることを語っています。
本作は大作です。何かしらの分野における教科書になっていいレベルではないかと思いました。