令和5年11月の読書感想文⑫ ある愛の寓話 村山由佳:著 文藝春秋
著者デビュー30周年記念作品。なんでしょう、胸にくるものがありました。
全6編の短篇集。
帯にある通り、この作品集は「その対象に伝わらなくても、わたしは愛している」というのがキーワード。お話にもよりますが、相手は人間の言葉が通じないものが対象となっているからです。
ペットを飼っていなくても、ぬいぐるみがなくても、そういった行動を伝えることは、多くの人にとってはあることなんじゃないかなと思います。
実際我が家には猫がいます。この本を買い求めたのも、そういったことが理由です。
言葉ではなく行動で愛を伝えて感じてもらうというのは、人間側の考えです。それを対象が文字通り受け取ってくれているかは、正直のところわかりません。しかしながら、それを信じたいという気持ちは強くあります。
言葉や行動、意思が通じないのは、人間も同様です。
そんな中でも変わらない気持ちで接することこそ、無償の愛なのではと書きながら思いました。そしてこれが村山さんの原点であり到達点だとすると、とても大きなことを書いていらっしゃる、まさしく愛の人なんだなと思いました。