つたわりとどけ。

日常と非日常のはざまから、伝え、届けたいことを個人で探求し、実践します。このたび不定期更新に切り替えました。

令和5年師走の読書感想文④ 一九六一東京ハウス 真梨幸子:著 新潮社

読んでみたらえげつない作品でした。想像していたのと違いました。

 

 

一九六一東京ハウス 真梨幸子:著 新潮社 個人蔵

 

 

テレビの企画で1961年の生活を再現しようと出演者を公募し、2組の夫婦に過ごしてもらおうという作品なのですが、そもそもの企画がどうやら違うらしく、何かの変遷を経てこのような企画になったようです。これは立案者も困惑します。

 

そんな企画を立ててどうするんだ?という疑問が浮かびましたが、そこはやはりテレビで、様々な仕掛けを用意していたようです。そういった「目玉」を用意することで、話題をさらい、視聴率をあげていく。これこそがテレビに代表される「正義」だと感じます。

 

しかしながら、雲行きが怪しくなってきます。

公募であっても、選ばれた家族は「利用される」ために選ばれました。悲しいことに、この企画で家族や人間関係は崩壊し、物語は最悪な方向へ進んでいきます。いや、進もうとしたところで、事件が発生します。

 

読んでいて、どこからどこまでが「仕込み」なのかがわからず、シナリオなのか、シナリオではないのかがわからないまま読み進めていくと一層混乱する作品。そして、この企画自体がどうやら「過去の出来事を明らかにする」目的のものであったことが判明します。その真実が判明するのか、その判明したことを、意図した人間は理解できるのか、かなりじわじわ来る作品だと思います。